今昔の瓦文化、人々に伝承

屋根材の瓦を美術品として展示する―。「高浜市やきものの里かわら美術館」は日本で唯一の瓦をテーマにした美術館だ。1995年に「三州瓦」の産地である愛知県高浜市に誕生した。瓦を含めたさまざまな美術品を保存・展示する。今年で開館25周年を迎え、若松文人館長は「美術館の枠を超え、ヒトやコトが集まる場所づくりを目指す」と意気込む。

所蔵する瓦作品は約3470点。全体の8割以上を占める。飛鳥・奈良時代の古い瓦から、庶民が瓦を屋根材に取り入れはじめる江戸中期ごろの瓦、そして寺院仏閣のために彫られた「鬼瓦」。ほかにも中国や欧州など、海外で焼かれた貴重な瓦も多く展示される。

その中で目を引く美術品は同市指定文化財の一つ、享保八年の文字が彫られた一対のこま犬「瓦焼狛(こま)犬」。1723年には存在したことになる。高浜の瓦師名が確認できる最も古い作品だ。

瓦は仏教とともに日本に伝わった。寺院の屋根に瓦が使用されはじめ、奈良時代には役所などに用いられる屋根材として全国に広がった。高浜がその産地となったのは、瓦が庶民の家でも使われるようになった江戸時代中頃。良質な粘土が採掘できる肥沃(ひよく)な土地柄と、海運に適した地理的条件から粘土瓦「三州瓦」の一大産地に成長した。

地域振興を目的に国が各市町村に1億円ずつ交付した「ふるさと創生事業」をきっかけに、同市で「やきものの里基本構想プロジェクト」が立ち上がった。瓦の歴史、焼き物を考える「博物館機能」、自分の手で土をこねて焼き物を作る感動を味わう「学習体験機能」、人とのふれあいを創造する「交流機能」の3機能を兼ね備える施設として開館した。

瓦の収蔵品が展示される「モノコトギャラリー」。イベントを開くこともある

建物は瓦を江戸に運んでいた千石船、その隣に広がる森前公園には波や魚に見立てた焼き物が置かれ、大海原を連想させられる。これからも今昔の瓦文化を地域と連携しつつ、人々に伝承し続ける。

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、当面は開館時間を11―16時に短縮
【メモ】▽開館時間=10―17時▽休館日=月・火曜日と年末年始▽入館料=常設展示は無料、特別展・企画展は展覧会により異なる▽最寄り駅=名古屋鉄道三河線「高浜港駅」▽住所=愛知県高浜市青木町9の6の18▽電話番号=0566・52・3366