近計システム(大阪市住之江区、長沢隆士会長兼社長、06・6613・5871)は、地震観測分野に参入して約45年の歴史がある。電力会社向け電力系統の計測・監視システムが主力事業だが、これまで培った計測技術を活用して多様な地震観測装置を実用化してきた。大学の地震研究者らに役立つ製品の開発・提供に日々努めている。

超多点で解析

大阪府高槻市内の山頂部に位置する京都大学の阿武山観測所。同拠点をベースに、京大防災研究所の飯尾能久教授が先導する次世代型地震観測システム「満点(万点)計画」の活動が2008年から展開されている。

満点(万点)計画では通常20キロ―30キロメートルごとに設置する地震観測装置を、調査地域100キロメートル四方の範囲で1キロメートルごと計1万点の設置を掲げる。超多点で地震データを計測し解析を行い、内陸地震が起こるメカニズムを解明する。究極の目標は「時機は難しいが、大地震の発生場所を推定できるようにする」(飯尾教授)ことだ。

近計システムは同計画に当初から参画し、京大防災研と地震観測装置の開発に取り組んだ。電源のない山中に設置しても半年以上フリーメンテナンスで稼働するのが目標だ。そのため「これまでにない低消費電力化が必要だった」(社会システム事業部防災システム部の本橋恵三グループマネージャー)という。

同装置で集めるデータは地震の波形に加え、時刻の精度も重要。使用電力の大きい全地球測位システム(GPS)利用を最小限に抑え、代替する水晶振動子の電圧を最適制御して低消費電力化を図った。

その結果、消費電力0・08ワット以下の地震観測用データロガー(記録装置)を開発した。データロガーに接続する小型・軽量の地震センサーも同時に開発。単1電池32本で約8カ月連続のデータ記録を実現した。

海外にも設置

16年には00年に発生した鳥取県西部地震の震源域で京大、九州大学、東京大学による大規模調査が決まり、同社は地震観測装置約1000台を受注し、一定期間活用された。現在、満点(万点)計画に大きな動きはないが、近畿地方中北部と山陰地方、長野県西部、ニュージーランドの国内外4カ所の計約230地点で地震観測は続く。

その後、低消費電力の地震観測装置が気象庁の目に留まり、火山観測システム分野にも15年に参入した。全国で常時監視が必要な火山は50ある。同社に求められたのは火口部付近の高所で雪の積もる冬期も観測できること。そこで消費電力を1ワット程度に抑え、無線通信や太陽電池・充電池を組み合わせた観測システムを開発。2年かけて48の火山に設置された。

同社の防災事業の担当者は研究者と一緒に現場で汗をかき、必要な装置を作り上げてきた。これまで納めた地震観測装置は累計2700台強だ。

京大の飯尾教授によると、内陸地震の研究は将来予測される南海トラフ地震にも関係してくるという。同社の防災事業は専任4人で年間売上高約1億円と自社の中では小さな事業体だが、存在感は高まっている。(大阪編集委員・広瀬友彦)