三菱ケミカルは欧州で、炭素繊維や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの製造、回収、リサイクルまで一貫して実施できる体制を整える。そのため炭素繊維リサイクルを手がける独CFKバレーステイドリサイクリング(CFK)と独カーボネクストを、スイス子会社を通じて買収する。買収額は数億円程度で、8月上旬に買収を完了する見込みだ。環境に配慮したビジネスが求められる中、日本に続き欧州で炭素繊維リサイクルチェーンを確立する。

炭素繊維に前もって樹脂を含浸させたプリプレグなどの中間材料では、加工の際に端材が発生する。CFKはこの端材を、自動車業界などの顧客から回収するネットワークや、リサイクルする技術を持つ。一方、カーボネクストはリサイクルした製品を販売している。ともに、廃棄物処理などを手がける独カール・マイヤーグループに属している。

CFKは回収した炭素繊維複合材料から、炭素繊維をエポキシ樹脂などと分離。再生した炭素繊維は主に欧州にある三菱ケミカルグループの拠点で再利用する。同社では、すでに子会社の新菱(北九州市八幡西区)が日本で炭素繊維リサイクルを手がけているが、CFKが炭素繊維リサイクルで有するノウハウは新菱と異なる。

CFRPなど炭素繊維複合材料は強度が高く軽量である点から、航空機や自動車、ロボットへの活用が期待されている。ただ炭素繊維複合材料はリサイクルが難しい点が課題となっている。

三菱ケミカルは2月に炭素繊維プリプレグメーカーの独c―m―pを買収。今回のリサイクル関連企業の買収によって、炭素繊維の製造から再利用まで一貫して手がける体制を整える。

また欧州ではエンジニアリングプラスチックリサイクルを手がけるスイスのミンガーグループも2月に買収しており、サーキュラーエコノミー(循環経済)に向けた取り組みに注力している。

環境負荷の低減「各社各様」 “業界一丸”期待する声も

炭素繊維は東レ、帝人、三菱ケミカルといった日本のメーカーで世界シェアの半分以上を占めるとされ、用途拡大も期待される有望な素材。ただ製造時の環境負荷が高いため、各社がリサイクル技術の開発や獲得に取り組んでいる。

東レは豊田通商と共同で、燃料にマトリックス樹脂の可燃性分解ガスを用いた炭素繊維のリサイクル技術を開発。帝人はリサイクル性が高い熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)「セリーボ」を開発し、トラックなどに採用されている。

12年には東レなど3社が共同出資して「炭素繊維リサイクル技術開発組合」を設立、炭素繊維のリサイクル量産技術の確立を目指したが、同組合は15年に解散している。業界では「日本企業が一丸となって取り組んだ方が良い分野」(関係者)との声もあるが、現時点では各社各様に解を探っている状況だ。