国内通信業界では3月に第5世代通信(5G)の商用化がされたばかりだが、第6世代通信(6G)の実現に向けた検討も進んでいる。NTTドコモは7月、「5Gの高度化と6G」と題した白書の第2版を公表。新型コロナウイルス感染症の影響を勘案した上で、6Gの活用例や技術要件などを示した。具体的には、空・海・宇宙での通信エリア構築で物流などの無人化や災害対策につなげる。(取材=斎藤弘和)

「集中し過ぎ、投資し過ぎ、移動し過ぎといった『過剰な』状態に対する警鐘と考えることもできる」―。ドコモは白書第2版で、新型コロナウイルスがもたらす日本社会への影響をこう分析した。東京を含む大都市圏への一極集中がウイルス拡散を助長したとし、そうした社会課題にあらためて向き合うことが、2030年代に導入が見込まれる6Gの利用例を考える上でも重要だと提言した。

【感染症対策も】

そこでドコモが6Gの目玉の一つと位置付けるのが、空・海・宇宙などあらゆる場所でギガビット毎秒(ギガは10億)級の通信速度を享受可能になる「超カバレッジ拡張」だ。実現すれば人や物の活動環境が広がり、新規産業の創出が期待できると指摘。具体的な活用例には農林水産業や物流業の無人化や高度化を挙げた。従来懸念されてきた人手不足問題だけでなく、感染症対策で人との接触を避けたい需要にも対応できる可能性がありそうだ。

実現に必要な技術の検討も進めている。ドコモは29―30日、白書の内容に関する説明や議論を行うオンラインイベントを開催。これに登壇した岸山祥久ネットワークイノベーション研究所無線技術担当課長は、カバレッジ拡張の手段として「高高度疑似衛星(HAPS)を使うことが考えられる」と解説した。

【光回線が不要】

HAPSは約20キロメートルの高度で一定の場所に常駐でき、半径50キロメートル以上の地上エリアをカバー可能。低軌道衛星などよりも高度が低いため通信遅延の低減が期待でき、災害対策だけでなく多くの産業での利用にも有望だという。「例えば建設現場に可搬基地局を持っていくときのバックホール(中継回線)は、光回線を引き回さなくても、すぐにHAPSで提供できるといった利点が考えられる」(岸山担当課長)。

もっともドコモは、HAPSを地上の通信ネットワークと効率的に連携させるには、周波数の利用方法をはじめとしてさまざまな課題があると認識。白書ではカバレッジ拡張以外でも、技術領域ごとに検討を要する事項が多数挙げられている。今後はそれぞれの問題の解決に向けた行程の明確化も求められる。

【利用例を議論】

また、新技術の活用シーンは自社だけでは洗い出しきれない。「6G時代にも、どういった利用例が想定されるかをパートナー(企業)の皆さまと議論していくことがますます重要になる」(谷直樹常務執行役員)。ドコモの大局観と指導力が問われ続ける。