日本触媒がデジタル変革(DX)を加速する。マーケティングや材料開発、生産プロセスなどにデジタル技術を用い、多様化する顧客ニーズを迅速に把握し、事業化までのリードタイム短縮を狙う。「2020年度は関連投資に数十億円を投じる」(五嶋祐治朗社長)方針。DXを推進力の一つとし、21年4月に予定する三洋化成工業との経営統合で高収益企業実現を目指す。

日本触媒は6月、データ解析を通じて新材料や代替材料を効率良く探索する「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」強化の専門部署を新設。25年度までに全研究員約400人がMIに関する基礎知識を習得し、うち2割を自らデータ解析できるようにする。

従来データ解析を活用し、主力のアクリル酸触媒や高吸水性樹脂(SAP)の性能向上や量産プラントを効率化してきた。これを展開し、他製品の解析や解析手法のプラットフォーム化に全社で取り組む。

10月にマーケティングの各プロセスを自動化する「マーケティングオートメーション(MA)」の運用を始める。新型コロナウイルス感染拡大などの影響もあり、素材企業にはマーケットイン型の提案が従来以上に求められる。デジタルツールを活用し、効率的に潜在顧客を掘り起こす。

姫路市の拠点では「24時間無人化SAPグローバル生産システム」の検証を始めた。人工知能(AI)などを活用し、SAP生産に関して完全無人化で品質担保できる生産プロセスのモデルケースを構築。将来はグローバル拠点に展開する。

一方で三洋化成が得意な多品種を製造するプラントでは「(自動化で)コストかかることもある」(五嶋社長)。デジタル技術導入による収益最大化には選別が重要となる。

インタビュー/日本触媒社長・五嶋祐治朗氏 プロセス開発で相乗効果

日本触媒社長・五嶋祐治朗氏

新型コロナの影響が続く中、来春予定の三洋化成との統合持ち株会社「Synfomix(シンフォミクス)」の設立の進捗(しんちょく)について五嶋社長に聞いた。

―統合延期発表時に比べて三洋化成との株価の差が縮まっています。株式移転比率に影響は。

「最終的にいくらか影響する可能性はあるが、悲観せず、いかに魅力的な新会社を作るかだ。新型コロナにより、汎用品を大量に売る当社と、ニッチで少量多品種な機能性化学品を手がける三洋化成という両社の特徴が出た。機能性化学品は多少販売数量が減っても、スプレッド(原料価格と製品価格の差)がきちんと取れる。(統合により)非常に理想的な新会社になる」

―具体的には。

「単純な規模追求ではなく、収益が取れて社会に貢献できる会社を目指す。例えば当社が得意な(生産の)プロセス開発などを三洋化成の新事業に埋め込み、より効率的なプロセスに仕上げられる」

「三洋化成はタイ、韓国など当社と違う拠点を持つ。統合できるところと互いの拠点を生かす部分をマーケティングをしていきたい。ガバナンスのあり方などを協議中だ」

―コロナ禍で21年4月の統合は可能でしょうか。

「なんとしても統合を目指す。統合後に入居する東京と大阪の新本社も決めた。両社による統合基幹業務システム(ERP)の試験も開始。合併時に稼働するべく高吸水性樹脂(SAP)の受注から出荷まで、システムにきちんと反映できるのかなどをテストし、最も高効率な方法を模索する」(京都・大原佑美子)