国内8万人、テレワーク移行

【「通勤」撤廃へ】

富士通は国内グループ従業員約8万人を対象に、テレワーク(在宅勤務)への全面シフトに踏み切った。新型コロナ禍に伴う事業環境の変化を逆手にとり、社内改革を推し進めた格好。時田隆仁社長は「迷いはなかった」と明言するが、対象者は国内従業員の9割近くにのぼり、驚きは社内外に広がった。

「通勤という概念をなくす」と語るのは人事担当の平松浩樹執行役員常務。7月に開いたオンライン会見で、平松常務は場所を問わない新しい勤務形態として「ワーク・ライフ・シフト」を提唱し、「在宅勤務を基本とする」と宣言した。

加えて、オフィス内の全席をフリーアドレス化して「2022年度末までにオフィス規模を現状から半減する」(平松常務)と言及する。さらに通勤定期券代の廃止や在宅勤務費用補助などの施策も順次実施すると熱弁を振るった。

急展開にも見える全面シフトだが、もともとテレワークは働き方改革の本丸であり、東京五輪・パラリンピック期間中の交通混雑を回避するために取り組んできたものだ。コロナ禍でこの流れが加速した。同社では一気呵成に生産性向上やイノベーション創出につなげる意気込みだ。

ただ、全社テレワーク宣言の際に「工場勤務や客先への常駐者は除く」としたことからも分かるように、仕事の役割によっては進捗(しんちょく)度合いに温度差がある。

【現場の挑戦】

注目されるのはモノづくりの現場だ。工場での現場作業や実証実験を行うには、どうしても出社せざるを得ない。だが、上流の設計工程はパソコン画面での仕事が多く、ここ数年来、働き方改革の一環として、リモート対応に向き合ってきた。

仕事をそのままテレワーク化しても付加価値はない。富士通が焦点を当てるのは、分散型の働き方による製品開発だ。具体策として、関係者が集まって意見を出し合う「大部屋会議」を3Dの仮想機上で行うなど、現場起点で動きだしている。

上流の設計工程で、プロジェクターを用いて、3Dモデルを「立体視」で確認する取り組み

【横串を通す】

目玉は3Dのデジタルモックアップ技術で再現した製品の完成イメージを設計、製造、保守の各部門で共有して意見を反映する仕組み。プロジェクターを用い、3Dモデルを“立体視”で確認する技術にも挑んでいる。

技術支援の立場で富士通全体の製品開発に横串を通す富士通アドバンストテクノロジの野崎直行部長は「こうしたサイクルを皆が納得できるまでグルグル回すことで、分散型の製品開発につなげる」と狙いを語る。

変革の流れは加速すれども戻ることはない。日本のモノづくりの文化である「すり合わせ」も、コロナ禍で新たな進化が問われている。