コロナ禍で、工作機械業界においてデジタルプロモーションの取り組みが広がっている。国際見本市が相次ぎ中止に追い込まれ、オンライン展にシフト。主要メーカーでも独自の訴求策に乗り出している。低迷が長引く工作機械市場の回復への起爆剤として期待がかかる一方、訴求効果を最大限創出するには、来場者を呼び込むための施策や見せ方などの工夫が欠かせない。(土井俊)

製品・技術、動画で配信 誘客策にウェブセミ

「オンライン展示会は緒に就いたばかり。コンテンツで勝負するしかない」―。「日本国際工作機械見本市(JIMTOF)」を主催する日本工作機械工業会(日工会)の担当者は、オンライン展の現状をこう捉える。

日工会は、東京五輪・パラリンピックの開催延期を受け、12月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で予定していた「JIMTOF2020」の開催中止を決断。代替として11月16―27日にオンライン展の開催を決めた。動画配信などを通じた製品・技術のPRの場とするほか、来場者データから出展者のリード(見込み客)獲得や商談実施などのサポート機能も用意する。

また“誘客策”として期待されるのが、ウェブセミナーなどの併催企画だ。リアル展示会と同質のセミナーのほか、学生向けイベントなども充実させ、「リアル展並みの盛況を期待したい」(日工会)としている。

JIMTOF、欧州国際工作機械見本市(EMO)と並ぶ世界3大工作機械展の一つで米シカゴで開催される「国際製造技術展(IMTS)」は、コロナ禍を契機としてデジタル対応に本腰を入れる。今年は9月14―19日にリアル展を開催予定だったが、既に中止を決定した。そこで、製造技術に関するニュースやストーリーを伝えるネットライブを9月14―18日に行うほかウェブセミナーやチャットを通じて参加者同士を結ぶデジタルプラットフォーム(基盤)の運用も近々始める予定だ。

IMTSの主催者である米国製造技術協会(AMT)のピーター・エールマン副会長は「ライブストリーミングとデジタルプラットフォームの立ち上げにより、(参加者に)ネットワーキングの機会と技術的知識を提供する」と意気込む。

そのほかにも、11月に台湾・台中で予定されていた台湾国際工作機械展(TMTS)や、工作機械と関係が深い金型加工技術展「インターモールド」も、それぞれリアル展が中止。オンライン展に切り替わる。

工作機械市場は米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染拡大の影響が重なり、低迷が続く。日工会がまとめた7月の工作機械受注実績(速報値)は、前年同月比31・1%減の697億円で、22カ月連続で前年実績を下回った。経済活動の再開を受けて、底打ちの兆しは見えつつあるものの、米中関係悪化や新型コロナ感染再拡大の懸念から先行きの不透明感はいまだ根強い。

主要メーカーも独自策 リアル展とシナジー構築へ

そうした中、見本市は「需要回復のカンフル剤」(大手工作機械メーカー幹部)との期待があった。展示会が続々とオンライン化に切り替わる一方、主要メーカーでは独自のオンライン策に乗り出し、リアル展示と合わせた両輪による販売促進を狙う動きも出ている。

DMG森精機は、毎週金曜日に最新機械・技術の紹介や実演加工を行う少人数制の展示会を6月に始めたほか、伊賀事業所(三重県伊賀市)内の展示施設をフルCG(コンピューターグラフィックス)化して再現した仮想ショールームも7月に公開した。

オークマは、開催中止となった4、7月のインターモールドの代替措置として、同社初のオンライン展を31日までの予定で開催中。牧野フライス製作所も、インターモールドに出展予定だった機械やソフトウエアを紹介するオンライン展を開催した。高山幸久執行役員は、今後のプロモーションのあり方について「新型コロナが大きなトリガーとなって、リアルとデジタルの両立が潮流となる」と見通す。

ファナックは秋頃にオンライン展を予定しているほか、「自社工場もバーチャルで紹介する取り組みもやっていきたい」(山口賢治社長)とし、自動化やロボット化の効果を訴求する考えだ。アマダも、オンライン上での新商品発表などを計画中だ。

前回のJIMTOFはにぎわった(18年の会場)

企業にとって、工作機械の導入は多額な設備投資となる。最新の機械となれば、オンライン情報だけでなく、担当者から直接説明を受けたり、自分の目で加工の様子を見て、確認・比較したいというニーズは根強い。たまたま立ち寄ったブースで“掘り出し物”に出くわす機会があるのもリアル展ならではの特徴だ。オンライン展定着に向けた工夫とともに、アフターコロナを見据えたリアル展との補完関係をどう構築していくかが問われる。


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