河西工業は、特別早期退職優遇制度を実施し300人程度の退職者を募集する。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた業績悪化に対応するほか、自動車の市場環境変化に対応するため人員の適正化を図る。

募集対象は正社員と契約社員。募集期間は9月7日―18日。退職日は10月31日。特別退職金や関連費用は2021年3月期連結決算に特別損失で計上する予定。同期は当期損益が2期連続の赤字になると予想している。

日刊工業新聞2020年8月31日

自動車部品34社の業績

自動車部品メーカーが、新たな生き残りの岐路に立たされている。3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大により自動車メーカーが世界中で生産停止に踏み切った影響で、主要部品メーカーの2020年4―6月期の業績は軒並み営業赤字に陥った。市場回復を受け下期以降は上向く見込みだが、業績見通しからは回復度合いの濃淡が鮮明になっていることがうかがえる。新型コロナ禍が各社の体力をあぶり出した格好で、さらなる競争の激化が予想されそうだ。(名古屋・政年佐貴恵)

“リーマン”より影響深刻

「稼働が一気に止まるのは未体験のこと。リーマン・ショック時は最も大きな赤字が出たが、今回の方がある意味厳しい」。アイシン精機の川崎有恒執行役員は4―6月期を襲った環境について、こう振り返る。新型コロナによる各国・地域の外出規制や、需要減に伴う生産調整で世界的に生産が停止。このほど集計した上場している主要部品34社の20年4―6月期連結決算では、全ての企業が営業赤字に陥った。

感染拡大を抑えた中国では早期回復が見られ、例えばジーテクトは中国で増収増益を達成。トヨタ紡織も増収となり、テイ・エステックは増産も実施した。しかし他地域の販売は大きく減少。不振地域を好調な地域でカバーする従来のやり方は通用しなかった。生産性向上や経費削減などのコスト低減努力でも打ち返せないインパクトで「世界中で生産が止まる中でも雇用を守りつつ固定費もかかっている状況は厳しい」(アイシン精機の川崎執行役員)。

一方、期末に向け業績は回復傾向が鮮明になるとの見方が大勢だ。通期見通しを示した主要部品27社の売上高合計は、20年4―6月期が前年同期比40%減の3兆1583億円だったのに対し、21年3月期予想は前期比14・2%減の17兆7702億円と減少幅が縮まる見通し。営業損益の合計でも、4―6月期は前年同期の2240億円の黒字から3317億円の赤字に転落したが、通期は前期比61・1%減の2304億円と黒字を確保する予想だ。野村証券の山岡久紘リサーチアナリストは「日本の7―9月期の自動車生産は前年同期比10―15%減まで改善する」と予想し「同期にかけて自動車部品各社の業績は回復に向かう」とする。ただ、その回復度合いには差がある。

トヨタ系、強さ顕著

強さを見せるのが、トヨタ自動車系部品メーカーだ。主要顧客のトヨタは今後の販売について7―9月期で前年同期比85%、10―12月期は同95%、21年1―3月期は同105%を計画。中国や米国で増産計画を示すなど生産回復が顕著だ。連動してトヨタ系部品は通期予想を公表した12社のうち8社が営業黒字を見通す。デンソーの松井靖経営役員は「車両生産は上期が前年同期比30%程度、下期は同5―10%減る予想で通期では同20%減」と見る。「トヨタの生産計画の内示は他社よりも変動が小さい」(部品メーカー幹部)ことも各社の業績予想の下支えとなっている。

加えて“お家芸”の原価低減活動で、利益を積み上げる方針だ。営業赤字予想の東海理化も「社内では黒字化を目指しており、1銭1ミリにこだわる改善を積み上げる」(二之夕裕美社長)。トヨタ向け以外との取引も多いジェイテクトは、IT基盤投資や固定費が増えているほか「欧州系顧客の動向がなかなか見通せない」(牧野一久専務取締役)ことが響き、200億円の営業損失を見込む。

中国を中心に回復を色濃くしているホンダ系部品メーカーも、底力を見せている。ジーテクトは「4―6月期を底に回復基調にある」とし、エフ・シー・シーはアジアでの販売増に加えて前期に計上した減損や製品保証引当金の影響がなくなり、利益を押し上げる。各社は設備投資の最少化や各種の改善活動を強化する方針だ。

一方、日産自動車グループを主力顧客とするユニプレスや河西工業などの日産系部品メーカーは、17年頃から続く日産の業績不振で体力低下が顕著。下期で一定の回復を見込むが通期で落ち込みは取り戻せない。ヨロズは7月以降の市場回復で下期は損益をブレークイーブンにする計画だが「上期分の赤字がそのまま残る」(同社)。日産は24年3月期までに現状比20%減となる年産540万台体制にする構造改革を打ち出している。新型コロナ禍の影響も不透明な部分があり、各社は難しいかじ取りを迫られる。

新型コロナが業界再編を加速する可能性も(愛知県内の部品メーカー工場)

基盤固めの動き相次ぐ

足元ではCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)による業界の激変を見据え、各社は事業構造変革や再編に動きだしている。ケーヒン、ショーワ、日信工業のホンダ系3社は、日立オートモティブシステムズとの経営統合を控え、アイシンは21年4月に子会社の変速機大手、アイシン・エィ・ダブリュ(AW)と合併する計画。タチエスは250人の早期退職募集を実施し、テイ・エステックもインドで生産拠点を再編するなど、基盤固めの動きが相次ぐ。

加えて新型コロナ影響による景気悪化で「一定の回復後でも、自動車生産は過去水準には戻らないと予想される」(野村証券の山岡久紘リサーチアナリスト)。コロナ禍ではサンデンホールディングス(HD)が事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請するなど、一部で経営そのものへの影響が見られ始めた。社会のあり方を変える感染症により、今後は優勝劣敗が今以上に明確になるだろう。さらなる業界再編の機運が高まることは避けられなさそうだ。

日刊工業新聞2020年8月13日