高い競争力を発揮する企業が数多く存在する日本。中でもとりわけ、徹底した差別化戦略を貫き、グローバル市場でトップの地位を確立しているのがグローバルニッチトップ(GNT)企業である。METIジャーナル9月号では、めまぐるしく変化する世界情勢や社会構造、技術革新の波をものともせず、特定の商品やサービス分野で異彩を放つ企業の強さの秘密に迫る。

なぜ「いま再び」なのか

今年6月、経済産業省は2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」として113社を選定した。顔ぶれは実に多彩。自動車や航空機、産業機械、医療分野などさまざまな分野に不可欠なキーパーツや素材、製法を提供する企業や競合の少ない専門的な市場で独自の地歩を確立している企業もある。事業特性こそ異なれど、共通するのは徹底した差別化戦略に基づき技術開発や経営努力を重ねてきた点である。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「平成30年度日系企業のモノ、サービス及びソフトウエアの国際競争ポジションに関する情報収集」調査結果

上にある新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が作成した「国際競争ポジションバルーンマップ」によると、グローバルニッチトップとは、図の右下に位置する製品群を指す。市場規模こそ決して大きくはないものの、世界市場では圧倒的なシェアを誇り、グローバルなサプライチェーンを支える重要な存在だ。

そんなグローバルニッチトップ企業をめぐっては、2013年度にも100選を選定している。なぜいま再び100選なのか。経済産業省航空機武器宇宙産業課の山口徹朗課長補佐はその背景をこう語る。

「あれから6年あまりが経過し、日本企業を取り巻く事業環境は激変しました。デジタル経済の進展やめまぐるしく変わる世界の政治経済情勢、少子高齢化といった社会構造の変化を前に、他社にはない強みを持つことは、これまで以上に重要になってきているのです」。

外的要因に左右されることなく安定した収益基盤を構築するには、独自の技術やビジネスモデルに磨きをかけ、市場の寡占度を高め、競争力を発揮することが切り札となる。加えて新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、多くの企業が生産や調達体制の見直しを余儀なくされている状況からも、サプライチェーンにとって、なくてはならない、唯一無二の存在であることの意味は一層、重みを増している。

将来的には市場規模倍増も

こうした背景を踏まえて選定が進められた「2020年版100選」。その要件は、大企業は「世界市場の規模が100億円から1000億円で、おおむね20%以上のシェアを保有」、中堅・中小企業の場合は、「おおむね10%以上のシェアを保有」していること。外部有識者による審査にあたっては、「世界シェアと利益の両立」や「技術の独自性と自立性」、「サプライチェーン上の重要性」に特に着目し、249件の中から厳正な審査が行われた。

こうして選ばれた113社の平均的な姿をみてみると、世界シェアは43.4%、営業利益率12.7%、海外売上比率45%という姿が浮かび上がる。さらにこれら各企業が提供する製品やサービスの市場規模は、5年から10年後には2倍以上に伸びると試算され、さらなる潜在性を秘めた将来有望企業といえる。

大海原を生き抜く羅針盤

梶山弘志経済産業大臣は、これら企業について「日本のみならず世界の産業にとってなくてはならないかけがえのない存在」と語る。その上で「足元の経済情勢はまさに荒れ狂う大海原だが、不確実な世界を生き抜こうとする多くの企業にとって羅針盤となってくれる」と表現。今後の事業展開を「最大限サポートする」構えだ。

熾烈な国際競争を勝ち抜き現在の地歩を固めてきたグローバルニッチトップ企業。次回以降はその横顔、強さの秘密を探る。