中国“2・3級都市”で販路拡大

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で東京五輪・パラリンピックが延期されるなど、スポーツ産業の先行きに不透明感が増す。スポーツ用品国内最大手のアシックスにも荒波が押し寄せる。一方で健康志向の高まりに伴い、電子商取引(EC)事業が急成長するなど新たな商機が生まれている。ニューノーマル(新常態)を見据えた対応を、アシックスの広田康人社長に聞いた。

―東京五輪ゴールドパートナーです。延期をどう受け止めていますか。

「ずれ込んだ五輪の成功に向けて粛々と準備を進める。五輪に合わせて投入する新製品の研究開発に時間的余裕が生まれたことも意味する。例えば6月に発売した長距離トップ選手向けのランニングシューズ『メタレーサー』。来る大会に向けてさらなる技術革新を進め、競合製品と勝負する体制を固める」

―20年1―6月期の連結決算は、売上高が前年同期比21・5%減の1468億円、営業利益は38億円の赤字でした。テコ入れ策は。

「新型コロナ感染拡大に伴う直営店の臨時休業やインバウンド(訪日外国人)需要低迷が響いた。ECでカバーしている米国や中国と比べると、日本の戻りが弱い。消費マインドの冷え込みの表れではないか。改めて中国のポテンシャルを感じており、上海などの大都市以外の“2、3級都市”への販路拡大にも注力していく」

―足元のEC事業による売り上げは前年同期比で倍増しました。

「想定以上にECが伸長した。ポストコロナでは店舗のありようが変わる。実際の購入をECで行う一方、店舗では走り方やどのようなレースに出場すれば良いかなど『ランニングのことなら何でもわかる』情報交換の場に変化していくだろう。また日本は自社ECサイトでの販売比率が7割程度と北米の約8割に対して低い。21年をめどに国内向けサイトに掲載する品目を絞り込むなど改修する」

―ベンチャーへの出資に意欲的です。

「人工クモ糸素材を製造するイスラエルのスタートアップ、シービックス・マテリアル・サイエンスなど新技術を持つスタートアップに対し、薄く広く出資している。自社の研究拠点と連携し、イノベーションをともに生み出す」

「丸ごと取り込むM&A(買収・合併)ではスタートアップの特性を生かせなくなる可能性があり、積極的には考えていない。オープンイノベーションが基本方針だ」

【記者の目/新中計で再成長の布石を】

日常生活にスポーツウエアを取り入れる「アスレジャー」の波に乗り切れず、最重要市場と位置付ける米国で苦戦。立て直しを迫られてきた。来年度から新中期経営計画を始動する。顧客に適した商品の市場投入やデジタル活用の加速など、“ウィズコロナ”時代を見据え、再成長の布石を打つ構えだ。(神戸・福原潤)

アシックス社長・広田康人氏