三菱自動車が収益性の改善に向けて構造改革を進めている。国内で最大600人規模の希望退職者を募るなど固定費削減に向けた施策を打っている。2021年3月期の連結当期損益は3600億円の赤字(前期は257億円の赤字)になる見込み。開発や生産体制の見直しを進め、23年3月期末までに“攻め”の姿勢に転じる考えだ。ただ新型コロナウイルス感染症の影響で、注力する東南アジア市場の先行きは見通せない。

「人員のリストラは覚悟している」。7月末に三菱自が構造改革の計画を公表する以前から、すでに同社関係者は人員削減の可能性を口にしていた。

固定費を22年3月期までに20年3月期比2割以上の削減を目指す上で、人件費の抑制は避けられない。11月中旬から国内で500―600人規模の希望退職を募る予定だ。対象は本社や岡崎製作所(愛知県岡崎市)、水島製作所(岡山県倉敷市)などで働く45歳以上の管理職が中心だ。

生産体制や車種見直しによるコスト削減も図っている。09年に発売した世界初の量産電気自動車(EV)「アイ・ミーブ」の生産を20年度内にも終了する方針だ。看板車種だった「パジェロ」を生産する岐阜県の工場閉鎖も決定した。「選択と集中」を矢継ぎ早に進めている。

アイ・ミーブの現在までの累計販売台数は約2万4000台と、販売不振に陥っていた。フル充電した場合の航続距離が当初の最大約160キロメートルのままで、他社のEVと比べて競争力で劣った。23年度までに日産自動車と共同開発する軽自動車のEVを投入予定ということもあり、アイ・ミーブの生産終了を判断したとみられる。

「今後2年間はコスト改革の期間だ」と加藤隆雄最高経営責任者(CEO)は話す。その上で競争力を維持している東南アジア地域を成長ドライバーと位置付け「ASEAN(東南アジア諸国連合)を基軸にした事業体制に移行する」方針だ。

ただコロナ禍でASEANの経済活動にはブレーキがかかっている。ASEAN自動車連盟によると、7月単月の域内販売台数は前年同月比32・7%減の19万5900台、生産台数は同49・4%減の18万4107台だった。どちらも4月単月の販売台数が同81・3%減、生産台数が同84・6%減を底に回復傾向にはある。とはいえ、インドネシアの首都ジャカルタでは広範囲な行動制限が11日まで延長されるなど、経済回復の予断を許さない状況だ。

三菱自の海外生産は大半がアジア地域でのため低空飛行が続く。1―8月の累計海外生産台数は前年同期比42・2%減の28万5189台。8月単月では前年同月比54・5%減の2万6762台だ。

厳しい事業環境だが新型コロナ収束後の新車需要の回復局面に向けた種まきはしている。9月にフィリピンで主力スポーツ多目的車(SUV)のプラグインハイブリッド車(PHV)「アウトランダーPHEV」を発売した。ASEANではインドネシアに続いて2カ国目の投入だ。電動車の需要喚起を狙う。

「構造改革をやりきれば収益力向上の道筋を示せる」と加藤CEO。20年度内にクロスオーバーSUV「エクリプスクロス」のデザインを刷新し、三菱自として2車種目となる切り札のPHVモデルも新たに投入する。構造改革の着実な実行と合わせて商品戦略も詰めながら、中期経営計画の最終年度となる23年3月期には成長軌道に乗せる考えだ。