ノーベル化学賞はゲノム編集の手法を開発した、独マックス・プランク感染生物学研究所のエマニュエル・シャルパンティエ博士と米カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ博士が受賞する。

ゲノム編集は、全遺伝情報(ゲノム)を自在に変えられる技術。細胞の中の核に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)を切断できる「はさみ」の機能を持つ人工酵素を使う。それによって、切断したい部分の遺伝子を狙って切れたり、切断した部分に別の遺伝子を挿入できたりする。遺伝子を“切り貼り”することで、自分がデザインした通りのゲノムを加工して作り替えることができる。

今回受賞する2氏は、従来のゲノム編集手法よりも簡単で効率良く目的の遺伝子を改変できる手法である「クリスパー・キャス9(ナイン)」を開発した。作り替えたい遺伝情報の場所を探す「ガイドリボ核酸(RNA)」と、DNAを切断する酵素「キャス9」を使うことで遺伝子改変を高効率化できた。現在ではゲノム編集技術で最も普及している技術だ。

クリスパー・キャス9によって、農作物の品種改良や医学分野などでゲノム編集技術が幅広く使われるようになった。

女性研究者2人の出会い―大西洋越え意気投合

2人の出会いは11年。プエルトリコの科学者会合でシャルパンティエ氏がダウドナ氏の研究発表を聞いたのが始まりだった。

「ダウドナ氏の発表は大変素晴らしく、RNAや真核生物に関して深い知識を持っていた。2人で協力すれば分子レベルの構造の理解を深められると感じた」。17年の日本国際賞受賞決定後のインタビューで、シャルパンティエ氏は共同研究のきっかけをこう語った。「協力して研究するには気が合うことも大切。その面でダウドナ氏とは意気投合した」と話した。

共同研究はドイツに拠点を持つシャルパンティエ氏と米国のダウドナ氏との間で進められた。シャルパンティエ氏は「フェデックスやDHLなどの物流業者を活用し、米カリフォルニアからはるばる大西洋を越えて検体を配達できたことにも助けられた」と語り、ダウドナ氏も「違った大陸にいても、時差があっても、協力はできる」と強調した。