食肉現物で供給

「ブラックスワン(予測不可能な事態)が起こった時、食べ物を現物で供給したい」―。新型コロナウイルスの流行による市場の混乱を教訓に、G.U.サプライヤーズ(大阪市港区)は、掛け捨て型の消費者向け食肉保障サービス「ブラック・スワン食糧保障」の提供を始めた。食品メーカーを対象に事業展開してきた同社にとって消費者向けサービスは大きな挑戦だ。

新サービスは感染症の世界的拡大や自然災害などにより食糧危機が起きた際、加入者へ食肉を10カ月間現物支給する保障サービス。1口当たり1万円(消費税込み)を支払えば、豚肉なら1キログラム、鶏肉なら2キログラムを毎月受け取れる仕組みだ。豚肉輸入価格の加重平均が1キログラム当たり3500円を上回ると食糧危機が起きたと判断し、自動的に食肉が配布される。

在庫を生かす

G.U.サプライヤーズは大手食品加工メーカーやレストランに外国産食肉の卸売りを手がける。メニューやレシピを提供する細やかさが飲食店の大手チェーンなどに人気で、数千店舗への輸入食肉納入を手がける。

ただ、コロナ禍で外食産業が打撃を受け、同社の取引量は2割減った。一方で、スーパーに買い物客が行列を作る様子を見て「市民向けに食肉を現物支給できないか」(草間社長)とひらめいた。

日本の2019年度の食料自給率(カロリーベース)は野菜76%、魚介類54%なのに対し、畜産物は15%以下と低い。「備蓄できない肉類はパンデミック(世界的大流行)や戦争などで食糧危機が来れば手に入らなくなる可能性がある」(同)との危機感から自社の在庫を生かしたビジネスを考案した。

同社の契約倉庫には取引先の需要変動に備えて常時1000―2000トンの食肉を冷凍保管している。うち売買する量は毎月400―500トン程度にとどまる。残りは流動的な在庫であることから、不測の事態になって消費者に直接支給しても十分に行き渡る。

10万口契約目標

新型コロナ対策として、米国が打ち出した給付金などの財政措置はリーマン・ショック時をはるかに上回る。米中対立も混迷を極めていることから「世界でデフォルト(債務不履行)が起こるリスクは十分にあり、食糧危機への意識は高まっている」(同)とみる。そこで万一に備えた保障が消費者にどう受け入れられるかを世に問いたい考えだ。

当面は10万口の契約を目標とする。国際情勢に明るい企業経営者などの富裕層をターゲットに定める。

食肉以外にも小麦など自給率が低く、外国に生産を頼る食糧は多くある。草間社長は「食糧保障で出た利益を生かし、農業ビジネスへの投資も考えたい」と話す。

災害や国際情勢の変化でサプライチェーンが寸断されれば、これまで当たり前だったものが手に入らなくなる可能性は十分にある。同社は“その時”に備え、食糧の輸入に留まらない新ビジネスを模索し続ける考えだ。(大阪・大川藍)