装着型ロボットスーツ「HAL」を手がけるサイバーダインと、飛行ロボット(ドローン)開発を手がける自律制御システム研究所が、それぞれ2020年4―9月期決算の発表に併せて中長期の事業方針を示した。両社ともに足元の業績は低水準だが、市場環境の一変により業績が急拡大する“夢”を秘める。両社の夢の実現度を分析した。(編集委員・嶋田歩)

サイバーダイン/ロボットスーツ「HAL」 医療機器承認・一般向け拡販

サイバーダインは4―9月期決算を発表した翌週の11月16日、株価が前週末比150円高の858円に急騰した。野村証券が投資判断を「中立」から「買い」に変更し、目標株価も引き上げたことが背景にある。引き上げの理由はHALの拡販に明るい材料が出てきたことだ。

HALは作業者の腰負担を軽減する一般的なアシストスーツと異なり、リハビリや医療機器に近い側面を持つ。「いすから立ち上がりたい」「右側のトイレに行きたい」など装着者の動作意思を反映した信号を読み取り、左足を1歩踏み出すなどの体の動きをサポートする。

国内では12月に脳卒中の医師主導治験が終了予定。22年に医療機器承認や保険適用決定が見込める。マレーシアやタイ、インドネシア、台湾、豪州などではすでに医療機器の承認を取得済み。米国でも米国食品医薬品局(FDA)から脳卒中と進行性神経・筋難病治療での承認を10月2日付で取得した。「承認までは長い道のりだったが、データをしっかりそろえたことが奏功した。今後の展開に弾みがつく」と山海嘉之社長は語る。

医療向けと並んで今後力を入れるのが、高齢者ら一般個人と福祉向けの拡販だ。施設に行かなくても自宅でHALを装着し、リハビリ訓練で効果を体験できる「自宅でニューロHALフィット」の内容を11月に刷新した。

料金を3カ月コースで月額4万8000円などと分かりやすくし、初期負担もなくした。コロナ禍で多くの高齢者は外出自粛を強いられ、運動機能低下や認知症発症の恐れが増している。一般個人がHALをレンタル購入できるオンラインストアも開設。山海社長は「テレビCMで、HALの認知度を高めたい」と話す。

同社の売上高は17年3月期以降、17億円程度で推移し、当期損益は赤字が続く。医療機器承認と一般向け拡販で、HALの台数を国内外でどれだけ伸ばせるかが焦点になる。

自律制御システム研究所/国産ドローンで協業 目視外飛行、解禁 政府調達2000台

自律制御システム研究所が期待するのが、22年度と目される有人地帯でのドローン目視外飛行の解禁と、政府機関のドローン調達方針だ。ドローンの画像撮影情報や飛行データを発電所や運輸など重要インフラへの攻撃に利用されるリスクが叫ばれる中、政府は中国製ドローンの購入を事実上禁じる。

政府関連機関の調達規模は2000台強が見込まれる。電力や通信、鉄鋼などの大手企業が同様の安全保障調達に動けば、さらに台数増が期待できる。鷲谷聡之社長は「22年度に台数ベースで1000台、23年度以降もさらに大きな需要が取り込める」と期待を示す。19年度は約300台だった。

電力や通信インフラのドローン点検では安全保障が重要になる(イメージ)

中国製ドローンは市場で高シェアを占めていただけに代替需要は大きい。ただ、欧米のドローンベンチャーも世界需要を見据え製品開発を急いでいる。鷲谷社長は安全保障の中身が機体自体に加え、運用体制や非常時の対応体制などに拡大するとし「日本国内では国産企業の優位性が増す」と自信を見せる。

ネックは機体開発だ。ドローン用途は今や軍事用や防災、警備、緊急物資輸送、インフラ点検、農業、土木測量、物流などあらゆる分野に広がっている。求められる性能も滞空時間や可搬重量、速度など用途に応じて異なる。同社は「必ずしも内製だけを考えておらず、自動車やバイクなどすでに確立された技術も含め、内外からの調達も視野に入れている」(鷲谷社長)とし、他社との協業を進める方針だ。