東京大学と日本ペイントホールディングス(HD)は24日、5年間に約10億円で運営する社会連携講座「革新的コーティング技術の創生」を開設したと発表した。IoT(モノのインターネット)や材料表面の制御など東大の研究と、同社の塗料・コーティング技術を融合する。光触媒のコーティングによる新型コロナウイルスへの効果検証では、同大医科学研究所の協力も決まった。

5月に結んだ両者の協定に基づき、同大の大学院工学系研究科に10月1日付で開設した。24日の会見で東大の五神真総長は「人とモノの接点で重要なこの分野に、物理と化学の融合で切り込む」と強調。日本ペイントHDの田中正明社長は「社会課題の解決に向け、(今回の社会連携講座の立ち上げと運営のために)産学の計80人以上が動きだした」と紹介した。

両者の社会連携講座では(1)スマート社会(2)環境負荷低減(3)感染症対応―の三つの柱で構成する。中でも注目はスマート社会だ。自動車の色を特定波長の光照射で変更したり、横断歩道の塗料に通信機能を持たせて安全情報をドライバーに知らせたりといった技術の可能性を探る。

環境負荷低減では、新塗料や、塗料表面をどう仕上げるかの工夫により、ビル外壁の温度上昇や劣化を防ぐ技術を模索する。感染症対応は人が触れる実環境での評価に力を入れる。

8人の特任教授は学内教員のまま、勤務時間の2割以上を同講座に当てる。コーティングと異なる専門分野の中堅世代だ。研究の新領域開拓と、研究成果の社会実装という二つの面で成果を狙える。近年の東大は大型資金を企業から引き出し、学内の若手・中堅研究者を育成するこの戦略を推進する。伝統ある塗料業界で革新的な事例となるか注目されそうだ。