新型コロナウイルス感染拡大に伴い、室内の空気の質に対する消費者の関心が高まっている。日本電機工業会(JEMA)の統計によると、空気清浄機の2020年1―11月の国内出荷台数は前年同期比34・3%増の約239万台。出荷額は同45%増の約687億円となった。感染リスクの低減には定期的な換気が不可欠。センサーや人工知能(AI)を用いた空気の質の見える化・最適化、換気促進など、ニューノーマル(新常態)に対応した機能強化が求められる。

コロナ拡大、異例の年

「例年は花粉と乾燥対策のニーズが増える時期に需要が増すが、20年は常に空気清浄機の引き合いがあった」―。家電量販大手ビックカメラの担当者は、異例の1年をこう振り返る。

空気の乾燥が目立ち始めると、加湿機能付きの製品を中心に消費者の関心がさらに高まり、同社の20年11月の空気清浄機の売り上げは前年同月比2倍に達した。

各製品が搭載する機能への関心も高まった。セールス・オンデマンド(東京都千代田区)の室崎肇社長は「機能に優れる高価格帯モデルほど販売が伸びている」と語る。

同社は空気清浄機メーカー大手ブルーエア(スウェーデン)の国内総代理店。20年の高価格帯の売り上げは前年比60%近く伸長。空気清浄機全体では同20%増という。20年12月には最上位モデルを初めて刷新。超微粒子の除去技術や本体内部の清潔性で消費者の声に応えた。

大きい伸びしろ 生産増強相次ぐ

内閣府の消費動向調査によると、国内の2人以上の世帯における空気清浄機の普及率は20年3月末時点で約45%と伸びしろが大きい。国内の主要メーカーは需要拡大の継続を見越して相次いで生産体制を増強している。

国内シェア首位のシャープは「プラズマクラスター空気清浄機」の販売が国内外で好調。20年度の世界販売台数は前年度比約50%増の300万台を計画する。タイや中国の拠点で増産するほか、20年度上期には新たにベトナム拠点でも生産を始めた。

パナソニックは空気清浄機の販売で20、21年度にそれぞれ同20%増を見込み、増産対応に入った。

ダイキン工業は住宅向け空気清浄機を中国で生産委託していたが、マレーシアや滋賀県草津市の工場で順次自社生産を始める。20年度の販売計画は同約2倍の78万台で、そのうち約50万台は国内向け。21年度は100万台超の販売を目指している。

パナソニックは空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の生産能力を従来比約3倍に増強

定番の空気清浄機だけでなく、空間除菌脱臭機も需要増を受けて生産強化が相次いだ。パナソニックは空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の生産能力を従来比約3倍に増強。21年にはメキシコでも生産を始めて、同年に全体の生産能力をさらに2倍に増やす予定だ。

富士通ゼネラルは、加湿除菌脱臭機「プラズィオン」を20年3月計画比約20%増産した。20年10月―21年3月の売り上げも前年同期比50%増を見込んでいる。

「プラズィオン」は10年以上販売しているロングセラー商品で、巣ごもり需要の拡大を受けて店頭では一時品薄となった。中川陽介経営執行役常務は「これを機にしっかりと製品の認知度を上げていく」と、今後のプロモーションに力を入れる姿勢を示した。

密閉避ける 基本は換気

空気清浄機などの高機能化は進んでいるとはいえ、感染拡大につながる“3密”の一つ「密閉」を避けるためにも換気を怠ることはできない。部屋の定期的な換気の必要性は感染拡大以前から示されてきたが、日本冷凍空調工業会の岡田哲治専務理事は「換気がこれほどクローズアップされた年は珍しい」と語る。

空調・冷凍機器などの業界団体である同協会では、エアコン利用中の定期的な換気を呼びかけている。1時間につき数分程度、窓・扉の開放や扇風機の活用などで室内に空気の流れを生むように意識すると、短時間で空気が入れ替わりやすいという。

多くのエアコンは換気機能を持たないが、そのことを知らない消費者は意外と多い。ダイキンが20年4月に実施した調査によると、回答者500人のうち約54%が知らないと回答した。現在、室外機から外気を取り入れる機能を備えた家庭用エアコンを展開するのは国内で同社のみだ。

コロナ禍で飲食店でも換気需要が高まっている

コロナ禍で換気に対する関心が高まったことで、今後は同様の機能が市場に広がりそうにも思えるが、岡田専務理事は「換気機能はあくまで付加価値の一つという位置付けにとどまるのではないか」と指摘する。

課題の一つが換気量の限界だ。冷媒用の配管や電気配線などを通す穴に外気を取り込むための管も通す仕組みでは、管のサイズを大きくしづらく、家庭用エアコンの稼働のみで十分な風量を確保するのは容易でないという。工事の手間や価格もネックになりやすい。

その代わり、センサーや人工知能(AI)などの活用には期待がかかる。例えば三菱電機は、AIが空調負荷が少ないタイミングを判断して換気を促す機能を提案している。データを使い間接的に換気に役立つ可能性はある。

私はこう見る

バリエーション、購買意欲増す―総合情報サイト「オールアバウト」 家電ガイド、電子雑誌「デジモノステーション」編集長・滝田勝紀氏

2020年は多くの人が、一生の中で最も空気について考えたのではないかと思うほど空気清浄機が売れた。これまでのピークは粒子状物質(PM)2.5の問題が話題になった12―13年ごろだったが、それを超える勢いだ。

「一家に1台」から「一部屋に1台」という流れが起きているが、2―3年はこの状態が続くのではないか。空気清浄機は参入障壁が高いわけではないので、需要拡大を受けて国内外で新規参入が進んでいる。バリエーションの拡大は設置増加の追い風になる。

加湿機能付き空気清浄機の人気が高いのは日本独特の傾向。本来は空気清浄に機能を特化する方が高い性能を出しやすいと考えている。機能の増加は大型化にもつながるし、加湿器と空気清浄機では適した置き場所も異なる。

在宅時間の増加で部屋やインテリアへの関心が増える中、置き場所やデザインに関する視点は今後の課題だろう。この点はエアコンも同様だが、最近は空間との調和を意識した製品が増えてきた。

空気の質の見える化などIoT(モノのインターネット)化する家電は増えているが、スマートフォンと接続して使うものだというイメージが先行していないか。家事を楽にするために一手間増やすような仕組みでは、なかなかIoTの普及につながらないだろう。(談)