東北大学大学院医学系研究科の大隅典子教授らは、父親の加齢が子どもの神経発達障害の発症に影響する仕組みの一端を解明した。父親マウスの高齢化に伴う、精子のDNA(デオキシリボ核酸)の化学修飾度合いが子どもマウスの行動異常に関与していることを突き止めた。さらに父親マウスの精子だけでなく、精子を経由した胎児マウスの脳の形成に制御因子が関与していることも見いだした。神経発達障害の予防や治療法の開発が進むことが期待される。

精神遅滞や自閉スペクトラム症など、子どもの神経発達障害は増加傾向にある。ヒトを対象とした疫学的調査で子どもに発達障害が生じるリスクとして、母親よりも父親の加齢が大きく関与することが世界各国で報告されている。だが、その仕組みは不明だった。

大隅教授らはまず、ヒトの40代後半から50代に相当する父親を持つ子どもマウスは、若齢の父親マウスを持つマウスに比べ、鳴く回数が少なく、単純な鳴き方が多いことを明らかにした。

次に父親マウスの精子に着目した。一度に大量の遺伝子配列解析を行う「次世代シーケンサー」を使い、加齢の父親マウスの精子を用いて全遺伝情報(ゲノム)の化学修飾の役割を持つメチル化について解析。加齢マウスの精子DNAに96カ所の化学修飾度合いの低い「低メチル化領域」を特定した。その多くに神経分化の制御因子が含まれていたことも明らかにした。

精子のDNAの低メチル化が子どもマウスに影響する可能性を検証するため、若齢の父親マウスに薬剤投与してDNAの低メチル化を行ったところ、生まれたマウスで加齢の父親を持つマウスと同様の状態を再現できた。

東北大加齢医学研究所や東京農業大学、愛知県医療療育総合センターとの共同研究。