電力需給の逼迫(ひっぱく)を受け、エネルギー業界が総出で対応策を講じている。液化天然ガス(LNG)在庫が不足するため、電気事業連合会は日本ガス協会と石油連盟に燃料の協力を要請。ガス協会と石連は会員企業に対して可能な範囲での協力を求め、東京ガスはLNGを融通する検討に入った。九州電力は独自にLNGの緊急調達を始めた。火力発電など既存設備の余力を最大限に引き出し、需要側にも協力を求める。大規模停電に陥らないための策を総動員する。

九州電力は一部運転を止めていたLNG火力の新小倉(北九州市小倉北区)3基をフル稼働した。自家用発電機を所有する事業者へも発電協力を要請。さらに、不足が懸念される燃料用LNGを緊急調達する。国内のほか韓国や台湾、中国など東アジアで荷揚げ後、輸送船に残る1隻当たり2000―4000トンのLNGを買い集める。原産国からの輸送に比べてリードタイムが短く済むため応急的に入手する。国内の企業間でもLNGを融通する。

関西電力は需給状況が最も厳しい。厳しい寒さが続く1月5日から13日まで9日連続で、他地域の電力会社から電力の融通を受ける異常事態になった。寒波が到来した12日は最大電力使用率が一時的に安定供給の目安(97%)を上回る99%となった。

関電は供給余力が極めて少ない事態を「(電力需要が高まる中で)原子力の定期検査延長や火力のトラブル、水力の渇水など複数の要因が重なっている」と指摘する。特に原発依存度が高い構造的な問題が大きい。原発の定期検査延長が続き、2020年11月から稼働ゼロが続いている。

中国電力は火力発電燃料の追加調達や試運転電力の活用などに加え、災害対策用の高圧発電機車を電力系統に接続して運転させる準備に入った。少しでも発電電力を稼ぐ狙いで、事業所15カ所で計画する。さらに、岡山県倉敷市のLNG基地の共同運用先であるENEOSにLNG在庫を融通してもらう要請を始めた。

電事連から協力依頼を受けたガス協会、石連は、会員企業に対して自主的な判断で協力を求めている。大量のLNGを取り扱う東京ガスも最大限に協力する姿勢をみせているが、厳しい寒さで足元のガス需要も増えており、余裕がないのが現状だ。寒波が到来したアジアではLNG価格が高騰しており、事業者間の融通は簡単ではない。

電力需給逼迫を招いた主たる要因は何か。直接には、例年にない冬の冷え込みで電力需要が大幅に増え、LNG在庫が不足したことだ。ただ、LNG火力発電は小売事業者の通知に基づき燃料を調達する。余計な在庫を持たないように仕入れるのは当然で、発電事業者の責任を問えない。

背景にあるのは16年の電力小売り全面自由化だろう。旧一般電気事業者は新電力との激しい競争を強いられ、安定供給との両立が難しくなった。将来の供給力を確保する容量市場の役割も再認識する必要がありそうだ。