川崎重工業が航空機分野の生産でデジタル変革(DX)を進めている。岐阜工場(岐阜県各務原市)の工程の一部で、作業に必要な書類を電子化し、生産に生かす仕組みを取り入れた。航空機産業では紙の図面などに基づくモノづくりが一般的で、生産性の向上が課題だ。同社は現場に定着している工場運営の手法を抜本的に見直すとともに、DXの導入を広げることを目指す。(孝志勇輔)

川重は航空機の生産革新活動「スマートK」を展開しており、段階的に適用する。まずヘリコプターの胴体の組み立てラインで実施しており、作業者にタブレット端末を配布し、電子化した作業指示書の確認や記録ができるようにした。厳格な管理の観点から続いてきた紙でのやりとりの見直しだ。

航空宇宙ディビジョン生産統括部生産企画部生産システム課の酒井亨課長は「スマートKはリードタイムの短縮を目指している。電子化することで多くの情報を収集でき、改善につなげられる」と説明する。設計者から生産技術者、作業者までが、生産に必要な情報を円滑にやりとりする仕組みだ。紙による管理と比べ、電子化で情報の検索や確認にかかる負担を減らせるのもメリットだ。

川重は航空機の生産ならではの課題の克服も狙う。改善の一環で設計などの変更が頻繁に発生しやすいことから、スマートKの活動を通じて、こうした変更への対応力を高める。「デジタル化で仕事のやり方を変える」(酒井課長)ことによる効果も見込む。

新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、旅客需要が急減している航空機産業はかつてない窮地に立たされている。川重も人員の配置転換を決めた。一方で、苦境だからこそ生産のあり方の見直しや意識改革を進める好機でもある。

川重はヘリの組み立てへのスマートKの適用効果を見極めながら、航空機部品の生産などに適用することを視野に入れる。スマートファクトリー化に向けて、以前からインフラ面をてこ入れしてきた経緯もあり、設備と生産管理の両面での改善が競争力の強化につながりそうだ。

占部博信DX推進部部長も「スマートKと同様の取り組みを他の工場に横展開する必要がある」と説明する。2020年夏に同部が設置され、DXを全社的に進める体制は整っている。航空機分野を皮切りに、DXを駆使したモノづくりの定着を目指す。