【航路基盤確立】

飛行ロボット(ドローン)による設備点検の高度化などを目的に東京電力パワーグリッド(PG)、NTTデータ、日立製作所は、有限責任事業組合のグリッドスカイウェイ(GSW、東京都港区、紙本斉士最高経営責任者〈CEO〉、03・4530・0036)を2020年3月に設立した。同年6月には中国電力も参画。自動飛行のドローンで鉄塔の架空電線などの電力設備を点検する。将来は全国共通の航路プラットフォームを確立し、物流や農林水産業など他業種にも提供する。

人が目視でドローンを操縦し、鉄塔の上など人が行きにくい場所を点検することは電力業界で一般的に行われている。ただ、一つひとつの鉄塔の側まで車で移動する必要がある。山間部は徒歩でないと近づけない場所も多く、時間と労力がかかる。GSWが目指すのは、ドローンによる目視外の自動飛行だ。

ドローンが空を飛び交う将来を考えた時、紙本CEOの脳裏に浮かんだのは「ドローンが鉄塔にぶつかれば、送電網に影響する」という電力安定供給への懸念だった。空の道を整えておけばドローンの衝突事故を防げる。そこで目視外飛行を安全で手軽に実現できる航路プラットフォームの構築を、GSWの目標に据えた。

【設備データ活用】

東京から広島県府中市にあるドローンを遠隔監視・制御する実証試験を実施(同社提供)

全国に送電線を張り巡らしている電力会社は、設備や周辺のデータが豊富にあり、ドローン運航管理システムの開発にフル活用できる。福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市・浪江町)で同システム開発に携わるNTTデータ、日立と組み、現場で使える仕様に練り上げる。

目視外の自動飛行を実現する上で、対処すべき課題が空の規制だ。国土交通省のルールでは、無人航空機による150メートル以上の高さの飛行は安全性を確保して許可を受ける必要がある。実際に送電用の鉄塔は山間部で谷間をまたいで設置される場合も多く、高さ150メートル以上の設備が全体の10%を占める。

安全性などを検証するため、20年に広島県府中市と埼玉県秩父市で同150メートル以上の自動飛行を行い、成功させた。国道や県道、線路の横断も関係当局との調整が必要なため、2月中にも茨城県の水田地帯で実証試験の準備を進めている。

【操作を簡単に】

今秋までに運航管理システムやオペレーションを現場の業務に即した形に仕上げ、実際の点検業務に使用する計画だ。ドローンを運用する現場では操作が複雑だと面倒といった心理があり、「いかに簡単に操作できるかが大事で、現場の抵抗感を取り除きたい」(紙本CEO)という。

電力会社での運用は各社の判断によるが、災害復旧の応援などを想定すれば共通化が望ましい。将来は航路プラットフォームを物流などの他事業者にも提供する。「長期戦になるが(電力の)本業と整合させ、できることから実際の業務に落とし込む」(同)とし、実績をつくることを最優先にする。その先に、ドローンが安全に飛び交う社会の実現を見据える。(編集委員・川口哲郎)