特殊な気象環境から航空機を守るため、気象影響防御技術(WEATHER―Eye)の研究開発への取り組みを2015年から開始するとともに、16年からは産学官でコンソーシアムを結成しオールジャパン体制で研究開発を加速させている。

年1万件超発生

航空機運航にとって雪氷・雷・火山灰・乱気流などの特殊気象は安全上の大きな問題となっている。国際航空運送協会(IATA)のリポートによれば、15―19年の5年間の世界の航空死亡事故の最大要因は特殊気象であり、40%の事例において何らかの気象現象が事故の主要因あるいは背景要因となっていた。

幸いにも日本の定期運航の旅客機では、気象が直接の要因となる死亡事故は発生していないが、滑走路雪氷によるオーバーラン事故や、乱気流による揺れでの乗員・乗客の負傷などが発生しており問題となっている。悪天候による運航変更、機材の不具合など、特殊気象を要因とする遅延や欠航などが日本でも年間1万件以上発生しており、運航へ甚大な影響を及ぼしている。

滑走路雪氷検知

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、これらの気象環境においても安全にかつ効率的に運航が可能になるよう、特殊気象を検知・予測し、防御・回避するための技術開発に取り組んでいる。滑走路上の雪氷をリアルタイムでモニタリングする技術、航空機への被雷を回避するために気象状況から被雷危険性を予測する技術、被雷による損傷を低減する導電性炭素繊維複合材料や着雷位置の制御技術、航空機エンジンへの着氷や火山灰による損傷を防ぐ技術、大気中の火山灰や氷晶エリアを回避するためにライダーで検知する技術、前方の乱気流を検知して機体を予見制御することで揺れを低減する技術など、いずれも世界的に見てもユニークな研究である。

センサー開発

昨今の新千歳空港における大規模な遅延・欠航、オーバーラン事故が示すように、本格的な冬を迎えるに当たり雪が航空機にとって問題となってくる。この問題を解決すべく、世界初となる滑走路雪氷モニタリングセンサーの開発に取り組んでいる。

滑走路に、レーザー光源とカメラを埋設し、滑走路表面の雪氷にレーザー光を照射、カメラで撮影した雪氷による光散乱の様相から雪氷の種類や厚さを同定する仕組みである。このセンサーにより、リアルタイムで滑走路の雪氷状況を把握することで、適切な離着陸判断や除雪判断が可能となり、冬季の運航安全や運航効率が大きく向上することが期待される。現在、福井や北海道での空港実証に向けて研究開発が進んでいる。(月曜日に掲載)

航空技術部門次世代航空イノベーションハブ副ハブ長 神田淳
1993年航空宇宙技術研究所、03―04年米デューク大学研究員、06―09年国土交通省航空局に出向、15年から気象影響防御技術の研究開発に従事。博士(工学)、技術士(航空・宇宙部門、総合技術監理部門)。