半導体の需要が増え続ける「スーパーサイクル」に再突入したことを背景に、半導体製造装置市場の活況が続いている。2017―18年の第1次に続く2回目の突入で、第5世代通信(5G)の普及やデータセンターなど向けの先端半導体需要がけん引し、20―22年は3年連続で市場拡大が続く見通しだ。自動車の減産を招いている車載用半導体の供給不足も、中長期では追い風になりそうだ。装置各社は強気の姿勢を示す。(張谷京子、編集委員・鈴木岳志、京都・大原佑美子)

5G・IoT需要追い風

従来、半導体産業は好不況を3―5年で繰り返す「シリコンサイクル」が起こることで知られる。しかし、IoT(モノのインターネット)の技術革新により、17―18年にはスーパーサイクルに昇華。19年には米中貿易摩擦の不透明感などが要因でマイナス成長に転じたものの、20年以降は再びスーパーサイクルに突入した。

半導体製造装置・材料の国際団体である米SEMIは、21年の世界半導体製造装置販売額が前年比4・3%増の719億ドル(約7兆5000億円)になると予測する。22年は同5・9%増。20―22年は、3年連続で成長が続く見通しだ。

「ロジック・ファウンドリー(半導体受託製造)の旺盛な投資に加え、5Gスマートフォンの普及とデータセンター投資の増加にけん引され、メモリー投資の回復が見込まれる」。東京エレクトロンの河合利樹社長は、21年の半導体前工程製造装置(WFE)市場の景況感をこう語る。21年の同市場は前年比約20%成長し、過去最高だった20年をさらに上回ると予想する。

同社は、IoTや5G向けなど最先端の半導体需要の増加を背景に、21年3月期の半導体製造装置(SPE)事業の売上高を20年10月公表比600億円増の1兆2800億円に上方修正した。

SCREENホールディングス(HD)も、21年3月期のSPE事業の売上高、営業利益を20年10月公表比でそれぞれ10億円上方修正。洗浄装置などの生産拠点「Sキューブ3」(滋賀県彦根市)の既存設備がフル稼働の状態だ。

半導体装置メーカーの業績は総じて堅調だ。アドバンテストは、試験装置など半導体・部品テストシステム事業の21年3月期売上高を20年10月公表比270億円増の2010億円に上方修正した。半導体ウエハーの切断・研磨装置などを手がけるディスコも「6月までフル生産が継続しそうな情勢」(広報)だ。

米政府による中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)への半導体輸出規制強化を受け、一時は慎重な投資姿勢を見せていた半導体後工程請負業(OSAT)の投資意欲も回復している。競合スマホメーカーが増産に動き、半導体需要が補完されたからだ。

OSATがファーウェイに振り向けていた設備は余剰になってしまったが、現在は「中国スマホメーカー間のシェア競争がその余剰分の急速な解消を促している」とアドバンテストの吉田芳明社長は分析。ファーウェイショックからの回復に胸をなで下ろす。

完成したディスコの茅野工場新棟(長野県茅野市)。延べ床面積は7.5倍

半導体大手、大規模投資続く

世界の半導体大手は21年も大規模な設備投資を継続する。ファウンドリー世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は21年12月期に過去最高の280億ドル(約2兆9000億円)を投じる。台湾での先端半導体の生産能力増強のほか、米アリゾナ州の新工場建設にも振り向ける。

TSMCと技術開発を競う韓国サムスン電子も先端半導体の受託製造強化へ積極投資する方針。先端開発で2社に後れを取る米インテルが今後外部への生産委託を拡大するため、その受け皿は当然台韓2社に限られる。

日本勢ではNAND型フラッシュメモリーのキオクシア(旧東芝メモリ)が、主力の四日市工場(三重県四日市市)と北上工場(岩手県北上市)で新棟建設計画を異例の同時並行で進めている。

イメージセンサーが主力のソニーも長崎県諫早市にある既存工場の隣接地に新しい製造棟を建設中だ。「21年のイメージセンサー世界市場はプラス成長を見込んでいる。5Gスマホに加えて、車載やノートパソコン、監視カメラ、家電などでカメラ搭載が増えて、市場全体は伸びる」(英調査会社オムディアの杉山和弘コンサルティングディレクター)と種類を問わず半導体需要は旺盛のようだ。

車載用、世界で供給不足

全世界で自動車の減産を招いている車載用半導体の供給不足も、装置市場にとってはプラスだ。特に、既存装置の機能を向上する「改造サービス」の増加につながる可能性がある。

半導体メーカーにとって、車載用半導体の急ピッチでの増産が求められる中、新たに装置を購入して生産体制を整えるには時間がかかる。このため、既存装置を改造し、再利用したいニーズが出てくるもようだ。

実際、東京エレクトロンの20年10―12月期のSPE向けフィールドソリューション(FS)事業は、装置の改造サービスが急伸し、7―9月期比14・5%増加。笹川謙ファイナンスユニットジェネラルマネージャーは「装置が何の用途に使われるかはわからない」としつつも「車載向けレガシーと言われる需要もFS事業に寄与している」との認識を示す。

FS事業は、装置の改造や部品の交換などのアフターサービスが中心。既存技術を活用できるため、新規装置事業と比べて利益率が高い。改造サービスの拡大は、装置メーカーの収益率向上の一助になり得る。

半導体需要は旺盛(シリコンウエハー)

ただ、装置市場の投資をけん引するのは、回路線幅5ナノ、7ナノ、10ナノメートル(ナノは10億分の1)のIoTや5G向け先端半導体。車載用半導体に使われていると見られる旧世代型装置の投資額も大きくなく、FS事業が売上高全体に占める割合は約3割にとどまる。

それでも、東京エレクトロンの河合社長は「半導体不足は半導体製造装置メーカーとして困ることではない。新規(装置)、FS双方の事業にとってプラスだ」と語る。

5GやIoT、人工知能(AI)、車載など、半導体の用途拡大が続く中、装置市場は中長期で成長が期待できそうだ。


【関連記事】 世界の半導体工場で、揺るぎない信頼を集めるクリーン搬送装置