モビリティー用途も視野

伊藤忠商事は、航空輸送分野で廃食油や動植物油脂を原料としたSAF(持続可能な航空燃料)ビジネスを本格化している。フィンランドの再生エネルギー大手・ネステと連携し、SAF輸入から品質管理、空港への搬入までのサプライチェーンを構築した。全日本空輸(ANA)ではすでに定期便の運行にSAF使用を始めている。伊藤忠は今後、ディーゼル車両など他のモビリティー用途での展開も視野に入れる。(浅海宏規)

伊藤忠がSAFの国内向け輸入契約を結んだネステは、フィンランド、オランダ、シンガポールに製造拠点を持つ。ネステのSAFは、通常は使用後に廃棄される非可食の動植物油脂などの廃食油を原料として航空用燃料を製造する。伊藤忠の稲田昭二石油・LPガス貿易部石油トレード事業課長は「航空機は自動車と違ってEV(電動)化するには技術的なハードルが現時点で非常に高い。二酸化炭素(CO2)削減をビジネスチャンスとして捉えた場合、バイオ燃料の需要は着実にある」と指摘する。

ネステのSAFを原料として用い、ライフサイクルアセスメントベースでの温室効果ガス(GHG)排出量を、化石燃料である石油由来航空用ジェット燃料と比べた場合、約90%のCO2削減が期待できるという。

SAFはこれまでの石油燃料と同等の安全性を満たすほか、輸送船やパイプラインなど設備面でも従来のものを使用できる。

伊藤忠がANAとSAFを旅客機まで輸送する際には、従来のジェット燃料と同様のサプライチェーンを使用。昨秋、千葉港頭石油ターミナルに到着後、航空燃料パイプラインを用いて成田国際空港まで輸送した。SAFが従来のジェット燃料と同様のサプライチェーンで搬送されることは、国内空港では初の試みだった。

稲田課長は航空輸送需要が2024―25年ごろにコロナ禍前の水準に回復すると想定した場合、「SAFの需要が高まる」と見ている。

ネステのSAF年産能力は現在、約10万トン。今後はオランダとシンガポールの生産能力を増強し、23年までに年産150万トン体制を確立するとしている。

伊藤忠はディーゼル車や船舶といったモビリティー分野においても日本向けの初輸入を目指し、ネステと協業していく考え。