人に仕え、人を支えるロボット―。メディカロイド(神戸市中央区)が開発した国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori(ヒノトリ)サージカルロボットシステム」は、患者やその家族のQOL(生活の質)向上を模索した末に誕生した製品だ。

従来の開腹手術に比べてより小さな傷で済み、人体への負担が小さい低侵襲手術の精緻化や安定化を支える。現在の外国勢による独占状態に風穴を開けることに期待がかかる。

ヒノトリは執刀医が3次元映像を見ながら、内視鏡カメラや鉗子(かんし)などの医療器具が付いた4本のアームを操作する。アームの関節数を増やして、アーム同士が干渉せずスタッフの動きも妨げない構造にした。アームは人の腕に近い細さ。人では難しい繊細な処置ができる。

2013年設立のメディカロイド。ヒノトリ発売以前は主にOEM(相手先ブランド)などによる手術台が売り上げの中心を占めていた。15年に手術支援ロボット開発に着手。田村悦之経営企画部長は「年1台程度のペースでプロトタイプ機を開発してきた。『ヒノトリ』は6代目」とした上で「共同出資元である川崎重工業が持つ産業用ロボット製造の知見と、シスメックスの医療機器関連技術や薬事申請などのノウハウが融合し、約5年で医療機器として市場投入できた」とする。

開発に際し、医療従事者に操作時の意見を求め、すり合わせた。「『もう少し軽い動きで操作したい』などスムーズさを求める定性的な情報を、定量的に設計図にどう落とし込むかで難航した」と田村経営企画部長は苦労を話す。

ヒノトリ開発に向けて打ち合わせをする開発チーム(メディカロイド提供)

ヒノトリは30年度(31年3月期)に売上高1000億円の目標を掲げる。実現には海外展開が必須になる。メディカロイドは16年に米シリコンバレーに現地法人を設立。20年秋にドイツ有数の工業州であるノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州にも現地法人を立ち上げた。きたる海外展開に備え、布石を打つ。(神戸・福原潤)

【製品プロフィル】

患者の胸腹部に穴を開けて、医療用カメラ、器具を挿入して行う内視鏡手術や腹腔鏡(ふくくうきょう)手術に用いる。20年8月に製造販売承認を取得し、同12月に泌尿器科の手術で初めて使用し、無事成功を収めた。「ヒノトリ」の名は医師免許を持っていた漫画家、手塚治虫氏の代表作品である『火の鳥』に由来する。