国内の商用車メーカーが電動化の具体的な商品計画を打ち出した。いすゞ自動車は電気自動車(EV)トラックの量産を2022年度に始めると明らかにした。他のメーカーも新たな電動化方針を示す。商用車は積載量などの課題から乗用車に比べて電動化が難しい。しかし世界的にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の流れが加速し、対応は待ったなしの状況だ。メーカーには電動化に合わせた事業モデルの再構築が迫られる。(日下宗大)

「『やれ』と言われれば、やる」。ある商用車メーカー幹部が吐露した20年12月。この時、30年代半ばまでに乗用車の新車販売を全て電動車にする政府の方針が明らかになった。商用車に関しては21年夏までに検討が進められる。乗用車に準じた措置になる方向と見られる。

政府の動きもあり商用車メーカーの想定より電動化スピードが速まる可能性がある。当初の政府目標の表現「30年代半ば」は、1月に菅義偉首相が通常国会の施政方針演説で「35年」と時期を明確にした。

トラックなどの商用車は電動化が進みづらかった。乗用車と同様に電動車自体のコスト面のほか、EVトラックの場合は搭載した電池の重さで荷物の積載量が制限される課題がある。電動車の開発は航続可能距離や用途を勘案して小型トラックがEV、大型は水素で走る燃料電池車(FCV)というのが業界での基本的な考え方だ。

給電ステーションなどインフラ面の懸念もある。電動車を走らせるためのインフラ整備が必要だが、電動車の一定数量が見込めないとインフラを提供する側も動きづらい。燃料電池(FC)トラックに必要な水素ステーションの整備もまだまだだ。

商用車幹部は冒頭の言葉に続いて「だが」と一呼吸置き、「カーボンニュートラルの目標は自動車産業のみの対応では実現不可能だ」とクギを刺す。別の幹部は「“卵が先か、鶏が先か”ではないが…」とこぼす。

他社と連携、開発強化

ただ従前より商用車メーカーは電動化の布石を打ってきた。その成果が表れる時期も最近、徐々に明らかになっている。

日野自動車は20年10月、電動化戦略を公表した。22年度に小型EVトラックの市場投入を目指す。超低床・前輪駆動タイプを開発中で、宅配用途のニーズに対応する。同社は18年、電動車の販売比率を50年までに100%にする方針を示した。その際は小型EVトラックの投入時期を「20年頃」としていたが今回、目標時期を固めた。

FCトラックはトヨタ自動車と開発を強化する。他社との連携も加速し、「小型から大型トラック、バスの電動車を発売して二酸化炭素(CO2)削減を推進する」(日野自の通阪久貴先進技術本部長)。25年度までには日本、北米、アジアの各市場に電動車を展開する。

いすゞは21年2月に小型EVトラックの量産時期を発表した。19年から宅配事業者などでモニター運行を進めて利便性などを検証してきた。その結果を踏まえて22年度に発売する。大型FCトラックに関しても20年からホンダと共同研究を進めており、22年度にモニター運行を始める。

電動化で先行するのが三菱ふそうトラック・バスだ。17年に世界初の小型EVトラック「eキャンター」を発売した。21年2月には納車台数が世界で200台を突破した。

20年3月にはFCトラックを20年代後半までに量産すると発表した。今後は全てのトラックとバスを電動化する。

いすゞが21年中に買収する予定のUDトラックスも電動化に注力する。30年までに大型電動トラックの量産を始める計画だ。

17年に世界初の小型EVトラック「eキャンター」を発売(三菱ふそうトラック・バス)

異業種との提携急務

激しくなってきた商用車の電動化の動き。EYストラテジー・アンド・コンサルティングの早瀬慶自動車セクターリーダーは競争優位に立つポイントについて「大きく三つある」と話す。

一つ目はバリューチェーンの部分でどう強みを出せるか。開発や設計、購買、販売、アフターサービスまで電動化対応を進める必要がある。さらに電池だけでなく電動車両を中古車として“二次利用”できるビジネスモデルの構築も大事だ。ディーゼルエンジンのトラックは東南アジアやアフリカ地域に輸出して二次利用、三次利用をしてきた。これらの地域でも「充電インフラの整備やEVトラックの二次、三次利用まで考慮できる企業が強い」(早瀬氏)。

二つ目は座組(ビジネスを構成するメンバー)。バリューチェーンのそれぞれで強みのある外部パートナーといかに早く組めるかが求められる。三つ目は電動化のルール形成や標準化だ。日本の弱点だが“勝てるルールを作って勝っていく”という戦略を立てる必要がある。

自動車業界では商用車や乗用車ともに新しい技術潮流「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」で100年に1度の大変革期と言われる。業界内だけでなく、異業種企業との提携も急務だ。「自動車業界サイドとしても壁を低くして協力することが求められる」(同)。電動化という一つの技術だけではなく、CASEのそれぞれの技術を有機的に合わせた新サービスを創出する視点も欠かせない。