出光興産は2020年12月に新オフィス(東京都千代田区)へ移転したのを機に固定席を廃止し、席数を5割削減した。新型コロナウイルス対策も兼ねた働き方改革の一環だ。社員の働きがいを高め、生産性を向上することで、会社の成長につなげる。社員の自発的な提案を取り入れる取り組みも成果を上げている。21年から働きがいと生産性の向上を両輪とした全社横断の構造改革プロジェクトを始動した。

出光興産は昭和シェル石油との経営統合以来、本社機能が千代田区内の3カ所と港区の台場に分散していたが、20年6月開業の新ビル「Otemachi One(大手町ワン)」に移転・集約した。新型コロナ感染拡大前から検討していた。当初は席数を3割削減する計画だったが、ソーシャルディスタンスを確保するため5割削減とした。関係性の高い部署を同じフロアとし、連携を取りやすくする工夫もしている。

リモートワークも積極的に取り入れ、連絡には米マイクロソフトの協業ソフト「Teams(チームズ)」を全面的に活用。会社に行かず、関係者に根回しせずとも同時同報で決済を迅速化した。こうした取り組みは、社員の声がきっかけだった。現場からの自発的な提案に耳を傾ける「DTK(だったらこうしよう)プロジェクト」の成果の一つだ。

同プロジェクトは19年に発足し、TPO(時間・場所・場合)に応じて服装を自由にするなど、社員の自主性を重んじた取り組みを推進している。DTK推進室長を務める三品鉄路執行役員は「社員に改革マインドを根付かせるのが大きな目的」と狙いを語る。

新オフィスに設けた共有スペース

石油化学製品を生産する徳山事業所(山口県周南市)では、社員の提案から会議の運営を見直し、時間短縮につなげた。検査・工事の問題解決と意思決定をする会議で、議題を厳選し、参加人数を減らし、ビデオ会議の参加を可能にした。保全担当課の会議時間は344時間削減できた。

同社は働き方改革の目標として、生産性と働きがいの向上を掲げている。生産性は労働時間の10%削減を目指していたが、DTKプロジェクトなどで13%削減を達成。同プロジェクトは3月末を区切りとし、今後は「高付加価値の仕事や新規事業の創出などができているか、生産性の検証にシフトする」(三品執行役員)という。

全社でデジタル変革を進める中、デジタル技術によって働き方を変える取り組みも加速する。現状は数字の作り方が部署により異なったり、ワークフローが重複したりで「デジタル化で効率化する余地は大きい」(同)。

DTKプロジェクトにより、社員一人ひとりの中で「だったらこうしよう」という機運が高まっているという。今後の取り組みの焦点は「自分が声を上げたことで改革につながったという実感、自信を次につなげていきたい」(同)。改革の成果を目に見えるようにし、社員の意識を一段と引き上げていく。