希少金属(レアメタル)のコバルトを使わない「コバルトフリー」の車載用電池の開発が広がっている。日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」などに電池を供給するエンビジョンAESCグループ(神奈川県座間市)が開発に着手した。パナソニックも市場投入に向けた動きを見せる。コバルトは生産国の偏りなどサプライチェーン(供給網)上のリスクがある。車の電動化で電池の調達競争が激化する中、コバルトフリーの電池は安定供給の一助にもなる。(日下宗大)

「競争力を高める観点でも、レアメタルを減らす観点でも取り組みを始めた」。エンビジョンAESCの松本昌一社長はコバルトフリーの車載用電池を開発中だと話す。

EVなど電動車の重要駆動部品となるリチウムイオン電池。その正極材にはコバルトが使われる。レアメタルゆえに価格が高いため、電池メーカーはコバルトの使用量を減らす努力を続けてきた。

コバルトフリーを進めるもう一つの要因は、サプライチェーン上のリスク低減だ。米地質調査所の報告によると、2020年の推計でコバルトの世界生産量の7割は、アフリカ大陸のほぼ中央に位置するコンゴ民主共和国が産出する。国際人権団体からは現地の採掘現場で児童労働など人権上の懸念が指摘されている。

世界的な脱炭素化のうねりで車の電動化が進み、電池需要は急増する。電池の安定供給に向けてコバルトフリーは喫緊の開発テーマだ。

パナソニックは1月、世界最大級の技術見本市「CES」でコバルトフリーの車載電池を開発すると発表した。現在のコバルト使用率は5%以下だ。これを数年内にゼロにする方針。同社の電池を使うEVメーカーの米テスラはコバルトフリーの電池の採用を目指す。

材料メーカーでもコバルトフリー対応を進めている。太平洋セメントは2月、コバルトを使用しないリチウムイオン電池向け正極材料を開発したと発表した。

エンビジョンAESCはコバルトフリーの電池投入時期について「市場で後れを取らないように、願わくば少し先行したタイミングで、と考えている」(松本社長)。EVの走行性能に関係するエネルギー密度や寿命特性を睨みながら、コバルトフリーに近づけていく。