千葉県銚子市の銚子マリーナから沖合に目を向けると、海上に風車が見える。東京電力リニューアブルパワー(RP)の実証設備で、着床式洋上風力として日本の沖合にあるのはこれだけだ。船で近づくほどにその大きさを実感する。海面からブレード先端までの高さは126メートル。30階建てのビルに相当する。この風車が立つ海域を対象に、5月末から事業者の選定が始まる。日本が洋上風力発電を大量導入する口火だ。

銚子沖に着床式

2019年4月に再エネ海域利用法が施行され、銚子市沖など4カ所が促進区域に指定された。公募による事業者選定のもと30年の占用が許可される。東電RPは洋上風力最大手であるデンマークのオーステッドとタッグを組み、応札に挑む。

「オーステッドと連日、喧々囂々(けんけんごうごう)の議論をしている」。東電RPの福本幸成技術士は応札の準備状況を明かす。オーステッドは世界で1150基以上の洋上風車を手がけ、合理化などの知見は並外れている。日本の環境や基準に即し、最適な事業計画を練り上げている真っ最中だ。

洋上風力は欧州がけん引する。オーステッドはもともと国営の石油・天然ガス開発会社だった。海でガス油田を掘り当てる技術を転用し、洋上風力に進出。今では石油ガス開発から撤退し、洋上風力専業に転身した。海の資源上流開発の経験がない電力会社にとって、洋上風力はいわば未知の領域だ。実績のある海外企業と組み、差を埋めるべく動く。

JERAは台湾西部沖合の3カ所の洋上風力プロジェクトに関わる。それぞれ運転中、建設中、開発中とステージが異なる。小野田聡社長は「普通ならば開発から運転まで長い時間がかるが、ぎゅっと圧縮してノウハウをためられる」と狙いを語る。大規模案件の組成能力を身につける。

形勢逆転狙う

洋上風力で日本が巻き返し、追いつく可能性もある。ゲームチェンジャーと呼ばれる浮体式だ。風車を海底に固定せず、索で係留し、浮かせた状態で立てる。欧州でもまだ開発段階だ。遠浅の少ない日本は浮体式が将来の主力とみられている。

国際石油開発帝石は「浮体のアドバンテージがある」(石井義朗常務執行役員)とみて事業化を見据える。陸から40キロメートル離れた磐城沖ガス田を20年以上運営した実績があり、「沖合で一定期間運営した経験があるのは国内で当社だけ。強みを発揮しやすい」(同)。西豪州沖合のイクシス液化天然ガスプロジェクトでも洋上に構造物を浮かせ、係留しパイプラインや電線を引き込むなどの技術蓄積がある。

浮体式の普及には、製造コストや施工性が大事な要素となる。浮体式技術の中で、東電RPが着目する一つがテトラ・スパー型だ。四面体構造に組み立てた鋼管とキール(重り)で構成する。「海底の浅い場所で組み立て、風車を付けてから沖合にえい航できる」(福本技術士)という。英蘭シェルグループなどがノルウェー沖で行う実証に参画し、知見やノウハウを積む。

政府は洋上風力で30年に1000万キロワット、40年に3000万キロ―4500万キロワットの導入目標を掲げた。系統整備や調達網構築など一企業で解決できない課題はある。目標に向け官民の力を結集できるか、国の力が試される。