コロナ禍にあって、産業界に円安の追い風が吹いている。米国で景気回復期待を背景に長期金利が上昇したためで、昨秋から1ドル=104円前後で推移していた為替が2月から円安に振れ、3月に入ってからは109円前後。輸出産業を中心に製造業にとって業績の上振れ要因となっている。

2020年半ばから受注回復傾向が続く工作機械業界は円安の恩恵が期待できそうだ。シチズンマシナリー(長野県御代田町)の中島圭一社長も「円安傾向は追い風の一つ」と認める。国内生産機種の海外での競争力が高まることに加え、国内市場でも円安効果で製造業の収益改善が進めば、海外に比べて動きが鈍い設備投資にも改善が見込まれる。

自動車業界でも業績改善が見込まれる。21年3月期業績予想で前提とする想定為替レートはトヨタ自動車、ホンダ、マツダが1ドル=105円、日産自動車は1ドル=105円80銭、SUBARU(スバル)は1ドル=106円に設定。円安に推移すれば、それだけ収益にもプラスの効果が期待される。ただ生産の現地化が進んでおり、「為替変動による収益への影響の幅は従来より少なくなっている」(自動車メーカー幹部)のも事実だ。

IHIは1ドル=105円を想定。1円の変動による営業利益の影響額は2億円。民間航空エンジン事業はドル建て契約のため恩恵を受けやすいという。三菱ケミカルホールディングスも円安は増益に寄与。対ドルで10円円安に動いた場合、コア営業利益(国際会計基準)は140億円上振れる。ここ数年のM&A(合併・買収)や海外工場新設による海外売上高の拡大で、円安のプラス影響は拡大する方向にあるという。

日立金属の21年3月期の想定為替レートは1ドル=105円で、1円変動で売上高の感応度は年20億―30億円、調整後営業利益の感応度は年4億―5億円としている。鋼材を輸出する一方で原料を輸入に依存する鉄鋼大手は、円安の直接的な業績影響はほぼ中立。日本製鉄は「コロナの状況下、外貨バランスは先行き不透明」、JFEスチールは「現状の為替水準なら大きな影響はない」とする。

私はこう見る 112円台までは今後も円安に あおぞら銀行チーフ・マーケット・ストラテジスト 諸我晃氏

足元の円安基調は、米国で追加経済対策による景気回復期待で、米国の長期金利が上昇したことが背景。国内製造業の想定為替レートは1ドル=106円台が中心で、円安分が収益改善になる。収益改善を織り込んだ株価上昇の効果もある。ただ、素材メーカーは原材料の輸入コスト上昇がマイナスになる。

今後は、目先は1ドル=105―110円のレンジを見込み、輸出型にとっては悪くない位置。半年間の視点では米国の金利上昇圧力で円安が進み、1ドル=112円台まではあるが、さらに進むかは懐疑的だ。新型コロナウイルス変異株の感染拡大で収束を楽観視できないため、120円台まで進むとは見ていない。(談)