安川電機の新たな頭脳拠点「安川テクノロジーセンタ(YTC)」が北九州市の本社に完成した。ロボットやサーボモーターなどの研究開発機能を集約し、九州工業大学の研究室やベンチャー企業も呼び込みオープンイノベーションで事業化を加速する。小笠原浩社長が「長年の夢」と語るYTCは、同社の「技術の砦(とりで)」としてモノづくり戦略を刷新する。(北九州支局長・大神浩二)

小倉600人体制

YTCは技術開発のシンボルとして150億円を投じて建設した。4階建てで、延べ床面積約3万平方メートル。北九州市小倉北区の開発研究所を移転したほか、埼玉県入間市や福岡県行橋市の工場に在籍する設計スタッフも異動し、2021年度末までに600人体制とする。本格稼働は9月を予定する。

安川電機は生産現場の自動化コンセプト「アイキューブメカトロニクス」や、デジタル経営を通じてグループの価値を最大化する独自のデジタル変革(DX)「YDX(安川DX)」などデジタル化を急速に進めている。YTCはグループの技術開発機能を1カ所に集め、デジタル技術を使って設計から量産の前段階までを早期に準備することで「顧客が勝てる製品をタイムリーに送り出す」(熊谷彰常務執行役員技術開発本部長)狙いがある。

汎用ロボ開発

建屋は4階に技術開発や評価部門が入居。3階は調達のほかオープンイノベーションスペースなどがあり、大学の研究者やシステムインテグレーター(SIer)が出入り可能になっている。同社は18年に国が新設した「地方大学・地域産業創生交付金」事業に九州工大、北九州市などと採択され、「革新的ロボットテクノロジーを活用したものづくり企業の生産性革命実現プロジェクト」を進める。

YTCは自社の産業用ロボットに加え、人工知能(AI)やセンサーなど大学が持つノウハウを活用した食品や農業などに利用する汎用の自律作業ロボットも開発する。

顔認証8段階

2階は試作や評価を行うエリアとし、1階にはクリーンルームや機械加工スペースを設けた。建物にはシンクライアント(記憶媒体を持たない端末)を導入し、顔認証など8段階のセキュリティーシステムも備えるなど情報管理を徹底した。小笠原社長は人協働ロボットなど「年に一つは新たな製品を送り出したい」と期待する。

これまでは事業部単位で製品を開発していた。だがIoT(モノのインターネット)やAIの進化で製品サイクルが早まり、グローバル競争も加速し研究から量産まで時間を割くことが難しくなっている。「スピードを上げ、余った時間は新たな製品を生み出す。事業部の垣根を取り払い、YDXで無駄もなくす」(熊谷技術開発本部長)。経営と生産両面で効率化を図り、ロボットなど成長市場で存在感を増す。