トヨタ自動車と愛知県豊田市が、電動車や水素ステーションを活用した災害対応支援の体制づくりに乗り出す。トヨタ本社工場(愛知県豊田市)の水素ステーションで豊田市の公用車に水素を充てんする実証実験を実施した。トヨタと豊田市は災害時に対する電気を住宅などに供給できる外部給電機能を持つ電動車の普及拡大に取り組んでおり、今回の実証を通じて災害時に電動車の機動的な支援にもつなげたい考えだ。(名古屋・山岸渉)

「工場の水素を有効活用できないかと考えてきた。地域の方を含めた仲間作りが重要で水素の使い方の一つとして提案したい」。トヨタの井上博文先進技術開発カンパニーエグゼクティブバイスプレジデントは豊田市と連携する意義をこう強調する。

実証実験は豊田市内で大規模災害が起き、市内各地で停電が発生したと想定。豊田市が持つ燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」は水素の充てんが必要だが、停電で市内の水素ステーションは使えない。そこで豊田市の災害対策本部がトヨタに応援を要請。ミライはトヨタ本社工場で水素を数分で充てんした後、避難所に行き、照明やポット、携帯電話の充電などの電源として使われた。

トヨタ本社工場の水素ステーションは災害時でも自家発電で稼働できる。本社工場には車両の開発用などにFCV約320台分の水素を備蓄している。トヨタは元町工場(豊田市)や東富士研究所(静岡県裾野市)にも水素ステーションを設置している。ニーズを探り取り組みを広げるかどうかを検討する。

豊田市はトヨタなどと連携し、電動車の外部給電機能の普及拡大を目指す「SAKURAプロジェクト」として2020年9月からイベント開催などに取り組んできた。今回もSAKURAプロジェクトの一環だが、太田稔彦豊田市長は「(同プロジェクトでは)これまで外部給電付きの車を普及させる素地を作ろうとしてきた」と説明する。今回の新たな狙いについては「実際に災害時に必要な場所に電動車を送り込む仕組みづくりだ」(太田市長)と力を込める。

4月からは豊田市の災害対策本部内に「停電対策班」を新設した。同班は避難所に外部給電機能付きの公用車を派遣する業務などを担当し、今回の実証は訓練も兼ねた。豊田市は外部給電が可能な電動車を約80台持つ。「訓練を通じていざという時すぐ使えるように備えたい」(豊田市の担当者)。機動的な支援体制づくりに取り組む。