東京大学100%出資会社の東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC、東京都文京区、大泉克彦社長)が運用する産学連携型ベンチャー(VB)投資ファンドが組成当初の約8.6倍となる240億円超に増額された。これまでの投資実績が認められ、出資者が4者から10者になった。VBの「シード」投資や環境・エネルギーなど20億円を超える投資が可能となる。

ファンド名称は「AOI(アオイ)1号ファンド」で2020年5月に28億円で組成。カーブアウト(事業切り出し)案件などVB6社に投資などで支援した実績を受け、SBIグループやダイキン工業など6者が出資者に加わった。

また東大と東大IPC共催の創業期VBと大企業と結びつけるプログラムに筑波大学、東京医科歯科大学、東京工業大学が加わる。名称は「1stRound」に改めた。

“ベンチャー第一”を産業界評価

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)は、ベンチャーキャピタル(VC)にとどまらない“イノベーションプラットフォーム事業会社”を自称する。同社が行う事業が京都大学など4国立大学の出資事業の一つで、イノベーション・エコシステムの構築に向けて国から多くの支援を受けているためだ。

まず2016年に手がけたのは成長期ベンチャー(VB)を対象に民間VCと連携する特殊ファンドで、投資先VBのうち4社の上場などに貢献した。さらに産学連携型VB投資ファンドのAOI1号ファンドで、民間VCが手がけにくい創業期やカーブアウトのVB支援に力を入れる。今回、同ファンドの増額を経て、同社のファンド組成は完結する。

また、創業期VBと大企業を結び付けるプログラム「1stRound」は支援案件の審査に民間VCが加わり、投資段階でも東大IPCより別のVCを優先することもある。それぞれのVBに適した育成法やVCを選ぶ“VBファースト”に徹する姿勢と国が支援するVCであることが、産業界の評価につながっている。

同プログラムは東大IPCと東京大学の共催で、主に東大関係者チームが支援対象だった。今回、技術シード創出にたけた自然科学系を持つ関東圏の指定国立大学との共催に拡大。数年前に国の施策変更で他大学案件へのファンド投資が可能になったためで、VB育成と投資の連動効果が期待できる。今後は各大学でどの程度、活用できるかが課題だ。

日本で成功例が乏しい企業からのカーブアウトVBもターゲットだ。以前は親会社も転籍した起業家も熱意不足など失敗の要因があった。しかし近年は大企業も新規事業投資に本腰を入れ、カーブアウトに適したIT案件が増加。AOI1号ファンドでの実績もIT2社、創薬1社に上ることから、成功例のさらなる拡大を目指す。(編集委員・山本佳世子)