IE(インダストリアル・エンジニアリング)は工場の現場をはじめとして、様々な物事を改善していくための手法です。現場ではこの手法を活かして業務を改善し、生産性の向上を図っています。しかし、一口に改善といっても、一体何に注目していけば良いのでしょうか。自動車メーカーに入社した新人IEr(アイ・イー・ヤー)の佐藤くんと、彼の先輩にあたる鈴木さんの会話を交えながら、IEを現場で実践する極意をお伝えします。

「工程」を対象にムダを見つけて改善しよう

作業者のムダを「稼働分析」で定量化する

新人の佐藤くんと先輩の鈴木さんは、自動車のボディーを生産している溶接課のサブ工程にきました。ここでは、複数の鉄パネル部品をスポット溶接することで、ボディーをつくっています。近年、溶接作業は自動化が進んできているものの、一部のサブラインでセットと取り出しは作業者、溶接作業自体はロボットと役割分担して生産している工程も多くあります。

鈴木:佐藤くん、先週は“動作”に着目した改善を行ったけど、今週はもう少し視点を広げて“工程”の改善を行いましょう。

佐藤:はい!

鈴木:この工程は、人が鉄パネル部品を治具へセットしてロボットが溶接するので、“ジグロボ工程”と呼ばれているのよ。鉄パネルは、第1工程、第2工程、第3工程と順番に加工されて、最後の検査台で検査して完成品パレットに積み込まれるの(図1)。各工程では作業者が鉄パネルと小物部品を治具にセットし、ロボットが溶接作業を行うのよ。第3工程の作業者はロボットへのセットだけでなく、最後の検査工程も受け持っているの。また、各工程で10枚生産すると、まとめて次の工程に運搬しているわ。

図1 サブラインで行う溶接ジグロボ工程

佐藤:なるほど。

鈴木:現在この工程では、 工数低減による生産性向上が求められているわ。この工程を見てどういう点が気になる?

佐藤:全体的に 手待ち時間が多い気がします。あと、各工程前後の 仕掛在庫が多いことも気になります。

鈴木:そうね。ではそれぞれの課題について、IE手法を使って現状分析をしてみましょう。まず、作業者の手待ち時間の分析には「稼働分析」という手法を使うのよ。先週座学で習ったわよね。実際に分析してみて。

いきなりそういわれ、佐藤くんはちょっと焦りました。それを察した鈴木さんは、やさしく助け船を出します。

鈴木:まずは「ワークサンプリング」で、ざっくり3人の作業者の作業の時間構成比率を求めてみて。

佐藤:わかりました。

さっそく観測板を持って観測を始めた佐藤くん。半日かかって現場を歩き回った後、明るい声でいいました。

佐藤:できました!(図2)

図2 ワークサンプリング結果

鈴木:分析結果から何がわかった?

佐藤:気になっていた手待ちは、特に作業者①と作業者②に多く、全体の58%を占めていることがわかりました。

鈴木:そうね。手待ちのムダが定量的にわかったわね。でも佐藤くん、この手待ちは自工程の中でのロボットが溶接しているのを待つ手待ち? それとも前工程からパネルを待っている手待ちのどちら?

佐藤:えっ? そういう見方で区別しませんでした。

鈴木:自工程に起因する手待ちと、前後工程の影響による手待ちでは、対策の方法が変わるの。だから、手待ちを分析する場合は、区別して分析するようにしなければいけないのよ。

佐藤:わかりました。

(「新人IErと学ぶ 実践 IEの強化書」pp.46-49より一部抜粋)

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書籍紹介

モノづくり変容/真の生産性向上に導くIE実践のバイブルとしてまとめた本です。活動の全体像と勘どころを対話形式で平易に伝えます。「動作」「工程」「生産ライン」「施設」「経営資源」とレイヤー別にムダ排除のアプローチを手ほどき。各種定義や分析技法などもやさしく図解しています。

書名:新人IErと学ぶ 実践 IEの強化書
編者名:日本インダストリアル・エンジニアリング協会
判型:A5判
総頁数:208頁
税込み価格:2,420円

目次(一部抜粋)

【第1章】IEとは
Q1 IEって何ですか?
Q2 具体的にどこでどう使われるのでしょうか?
Q3 IEって工場の現場改善のために使う手法なのでは?
Q4 「ムダ」を見つけるって、どうやれば見つかるのでしょうか?
Q5 手法もいろいろな種類がありますが、どんな違いがあるんですか?
Q6 「ムダ」を見つけた後、「改善」に結びつけるにはどうしたらよいのでしょうか?
Q7 IEってどうやって学んだら職場で成果を出せるようになりますか?

【第2章】新人IErが身につけたい実践の勘どころ
2-1 動作・作業 対象:作業者
2-2 工程 対象:人・モノ・設備
2-3 ライン 対象:ライン
2-4 施設全体 対象:レイアウト・物流
2-5 経営 対象:サプライチェーン

【第3章】IEを実践するために知っておくべき基礎知識
3-1 現状を分析する手法
3-2 基本用語