日本がリード

全固体電池の普及へ素材などの最先端研究が加速している。出光興産は4―6月に、千葉事業所(千葉県市原市)で電池の中核材料となる硫化物系固体電解質の量産実証設備を稼働させる。同社は同電池の材料分野で世界トップクラスの170超の特許を保有する業界の雄。同材料の開発は日本がリードしており、三井金属も硫化物系電解質の量産試験設備を導入している。

自動車などに搭載される中―大型の全固体電池には、まず硫化物系の固体電解質が採用される見通し。硫化物系は電解質内をリチウムイオンが素早く動くことに加え、柔らかいため正・負極材との間のすき間を埋めやすいことが強み。特に正・負極と電解質の間が途切れずにイオンがよく通る境界面(界面)を作ることは、同電池の成功のカギを握る。

狙うは800ワット時

2018年度に始まった新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)プロジェクトは硫化物系を使い、界面を含む電池設計で重要な成果を打ち立てた。20年度までの中間目標で、現行の車載リチウムイオン電池と同等のリットル当たり体積エネルギー密度450ワット時を達成した。製造方法も現行電池と全く異なるため、非常に高い目標だった。

嶋田幹也プロジェクトリーダー(リチウムイオン電池材料評価研究センター〈LIBTEC〉委託事業部長)は、「材料やプロセス技術など、多様な技術者が集結したからできた」と胸を張る。LIBTECには企業からの出向を含め50人強の技術者が集まり、コロナ下も研究を続けた。今後、新たな正・負極材の採用や電池の積層化などを推進し、同800ワット時を目指す。

同プロジェクトの成果は日本が全固体電池でリードを続けるための土台となる。同電池を標準モデルとし、新しい電池材料を組み込んでいくことで通常よりも開発期間を短縮し、電池の進化を加速させる狙い。

開発効率カギ

世界の開発競争は激化しており、1月には中国の新興電気自動車(EV)メーカー・NIOが新型EVに固体電池を搭載すると発表した。同電池は電解液を混ぜて界面の問題を緩和した“半固体”と予想されているが、「中国は注視すべき存在」と嶋田プロジェクトリーダーは指摘する。電池の研究者数では到底かなわない。標準モデル電池を用いた開発効率化が不可欠だ。

日本の材料研究のすそ野は広く、住友化学と京都大学は硫化物より安全性の高い酸化物系電解質を用いて全固体電池の革新を目指す。研究成果を産業での成功につなげ、日本の電池産業が復権することが求められる。

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