関西の鉄道各社で、鉄道設備の保守・メンテナンス業務の自動化への動きが拡大している。作業員の減少や高齢化に伴い、労働集約型を維持することが難しい現状が浮き彫りとなってきた。一部機械化による省人化や、鉄道設備の状態監視で点検回数の最適化を図り、新型コロナウイルスの影響で落ち込む鉄道事業のコスト構造改革にも大きく貢献する。(大阪・池知恵)

AIで故障予測

JR西日本は、人工知能(AI)を活用し、駅務機器の故障を予測するシステム「自動改札機故障予測」を2021年度中に全支社へ導入する予定だ。同社が管轄するエリアには現在、自動改札機、券売機、精算機計約3100台が設置されている。通常、1台当たりの点検回数は年4―12回必要だ。

AIで故障を予測することで事前に故障確率の高い機器がわかり、不必要な部品の交換を減らすことができる。従来の保守メンテナンスコスト約10億円から約2億円の削減が実現する予定だ。

状態監視には関西の鉄道会社の中でJR西日本が先陣を切って取り組んできた。長谷川一明社長は「実際にメンテナンスをするのは協力会社。この10年間で、ある事業者は約20%従業員が減少した」と深刻な現状を述べる。コストダウン効果が出るまでに多少時間を要してでも、取り組むべき重要課題と位置づけ投資に力を入れる。

他にも沿線の電気設備に電圧や温度、地盤の角度を監視するセンサーをつけ、常時監視する設備を整え、30年度には電気設備の検査業務で年間約5億円の削減を見据える。

南海電気鉄道も6月から、転轍(てんてつ)機(車両を他の線路に移すための装置)に、電流や電圧などの状態監視装置を導入する予定。

保守・メンテナンス業務には、危険を伴う作業も多い。終電から始発までという、視野が狭まる夜間帯での作業や、高所作業が伴うトラス構造の橋梁の点検、高電圧が流れる電気設備などがある。

ドローン使い作業負担軽減

南海電鉄は自然災害後を想定し、ドローンで上空から線路の状態を確認する

京阪ホールディングス(HD)と南海電鉄は、ドローン(飛行ロボット)を活用した鉄道設備の点検の実証を始めた。遠隔監視・点検により、安全性の向上だけでなく、工期の短縮にもつなげる。

橋梁の点検では一般的に、高所作業で必要な足場組みから点検まで約3―4カ月間を要し、足場の費用は数千万円にのぼる。加えて終電から始発までの短い作業時間で対応する必要がある。ここにドローンを活用することで「かなりの作業負担が軽減される」(担当者)とみる。台風や地震などの自然災害発生時においても、線路への土砂流入などをいち早く確認する手段としても期待される。

JR西日本は国内鉄道業界で初めてロボットアームを搭載した鉄道電気工事用車両を開発。電線を支える「ブラケット」の取り替え作業の機械化・自動化を可能にした。

コロナ禍で関西鉄道各社の経営は低迷するが、そんな中にあっても安全対策への投資の手は緩めていない。それでもJR西日本の長谷川社長は「保守・メンテナンスの機械化の目標を100%とすると、数%にも及ばない。まだまだ人海戦術の作業は多い」と語る。

安全対策とコスト構造改革をいかに両立できるかが、今後も持続可能な鉄道運営に向けての課題となる。