チャーター/“空飛ぶ車”/環境対応…コロナ禍こそ変革の時

国内の航空大手2社が総合商社と組み、新ビジネスの拡大や環境に配慮したエネルギー対策を進めている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って人の移動が激減し、これまでにない打撃を受けている航空業界。ポストコロナをにらんだ次なる一手を模索している。(浅海宏規)

ホンダの「ホンダジェットエリート」

ビジネスジェットに潜在需要 “空飛ぶオフィス”提供

「コロナ前、コロナ禍での事業展開を通じて、日本のマーケットにおいても潜在需要を実感している」―。ANAビジネスジェット(東京都港区)の片桐純社長は、ビジネスジェット(BJ)事業を取り巻く状況についてこう説明する。

同社は2018年にANAホールディングス(HD)が51%、双日が49%出資して設立した。世界40社以上の運航会社と業務提携しており、機材を持たず、顧客の要望に合わせて最適なフライトプランを提供する。

コロナ前には、定期便で日本から海外へ向かい、現地でBJを利用する「エリアチャーター」が利用の約60%を占めていた。上場・オーナー企業のトップが定期便とBJを組み合わせて利用するケースが多かった。

コロナ禍ではエリアチャーターが約25%まで下がる一方、日本から海外へBJで渡航する「グローバルチャーター」が約50%(コロナ前は約30%)まで増加。海外生産拠点の再開などに伴い、エンジニアの派遣などが増えたことが背景にある。

また、日本国内をBJで移動する「国内チャーター」も約25%(同約10%)まで伸びた。この結果、20年度の国内チャーターの取扱件数は前年度比で5倍強となった。

従来、BJの利用は時間短縮や秘匿性の高い自由な空間の確保、柔軟なスケジュール設定といったニーズが多かった。片桐社長は、「欧米市場に比べると日本の市場は小さい」としながらも「感染対策による需要も高まるはずだ」と指摘する。

一方、日本航空(JAL)は丸紅と19年にJALビジネスアビエーション(東京都大田区)を設立。チャーターフライトの手配や、個人や企業などが所有する機体のマネジメント、日本を発着するBJ向け運航支援といったサービスを展開している。

2月、丸紅はホンダの小型ビジネスジェット機「ホンダジェットエリート」について、国内で初めて一般客向けにチャーターサービスの提供を始めた。JALビジネスアビエーションが販売窓口となる。ホンダジェットの国内チャーター手配は現在休止中だが、少人数で移動できるBJの利点を生かしつつ、“空飛ぶオフィス空間”として需要の掘り起こしを狙う。

垂直離着陸、気軽に移動 運航ノウハウ生かす

JALと住商は米ベル・テキストロンと提携。アジアで「空飛ぶクルマ」サービスの検討を進める

JALは20年、住友商事、米ベル・テキストロン(テキサス州)とエアモビリティー分野での共同研究推進で業務提携し、取り組みを継続中だ。

日本とアジアでベルが開発する電動垂直離着陸機(eVTOL)を用いた移動サービス“空飛ぶクルマ”の実現可能性を探る。JALは、航空機による安心・安全運航のノウハウを生かし、次世代エアモビリティーの運航プラットフォーム(基盤)の構築につなげる。

住商にとっても空飛ぶクルマへの期待は大きい。同社は19年からベル・テキストロンと、エアモビリティー分野での新規事業創出を目的に市場調査や共同研究で業務提携してきた。住商はベトナムでスマートシティー(次世代環境都市)の開発プロジェクトを進めており、将来は空飛ぶクルマを使ったサービス提供も視野に入れる。

CO2排出減 廃プラを航空機燃料に

SAFを旅客機まで輸送する際には、従来のジェット燃料と同様のサプライチェーンを活用(伊藤忠とANA)

ESG(環境・社会・企業統治)や脱炭素への意識が高まる中、ジェット燃料を大量に使う航空会社にとって、二酸化炭素(CO2)の排出量削減は喫緊の課題だ。

20年2月にJALは丸紅、ENEOSなどと共同で、日本における代替航空燃料製造・販売について、事業性調査を実施すると発表。廃棄プラスチックを原料とした航空燃料のサプライチェーン(供給網)構築を目指す。

全日本空輸(ANA)は20年、フィンランドの再生エネルギー大手ネステとSAF(持続可能な航空燃料)の調達で提携した。SAFの調達に加え、輸入から品質管理、空港への搬入までのサプライチェーンをネステ、伊藤忠商事と共同で整備した。調達したSAFは羽田、成田発の定期便で使用するなど、実績を重ねている。

伊藤忠商事の稲田昭二石油・LPガス貿易部石油トレード事業課長は、「航空機は自動車と違って電動化の技術的なハードルは現時点で非常に高い。CO2削減をビジネスチャンスとして捉えた場合、バイオ燃料の需要は着実にある」とコロナ収束後を見据え、ニーズの高まりに期待を寄せる。

航空需要は大打撃、回復にしばらく時間…カギはやはりワクチン

国際航空運送協会(IATA)は4月、21年の世界の航空需要について、新型コロナウイルス感染拡大前の19年と比べて、57%減になる見通しを示した。20年12月の予測(49%減)から下方修正した。

また、21年の航空会社全体の売上高は19年の55%にとどまると予測しており、航空会社の業績に明るさが見えるまでに、しばらく時間がかかりそうだ。

今後の需要動向について「カギを握るのはワクチンだろう」(赤坂祐二JAL社長)との指摘があるように、世界的にワクチンが普及できるかどうかが需要回復のポイントになりそうだ。