NTNは水素の侵入により鋼材に生じる亀裂を抑え、自社従来品に比べ寿命を3倍伸ばす「耐水素脆性(ぜいせい)軸受」を開発した。軸受の転動体と接触する鋼製の軌道面に、摩耗しにくく水素も入りにくい硬質で微細な金属化合物を分散配置する技術で可能とした。自動車の軸受などでは軽量化や環境負荷低減から潤滑油の低減、低粘度化が求められ、可動条件が過酷となっている。これらを克服し長持ちする軸受として、2022年度から提案する。

軸受の軌道面は転動体と接し表層が摩耗すると、潤滑油の分解などが原因で水素が発生する。水素は摩耗箇所から軌道面に侵入し拡散し、多数の微細な亀裂を生じさせ、鋼がもろくなる「水素脆性」を起こすとされる。

そこで耐水素脆性軸受には、軌道面表層に大きさ50ナノ―100ナノメートル(ナノは10億分の1)の硬質な金属化合物を分散し加えた。これにより、潤滑油の希薄な条件でも摩耗しにくく、水素が発生する軌道面の露出も抑える。水素の侵入を止める金属構造も形成する。

水素の多い状態で急な加減速の負荷も加えた社内試験によると、耐水素脆性軸受は自社従来品に比べ破損する寿命が約3倍伸びた。競合他社の高耐久性軸受の鋼材と比べても、約1・5倍に上った。

加えて、耐水素脆性軸受には特殊な熱処理工程の焼入れで、軌道面の窒素濃度を高める浸窒処理を行い、疲労の進行を遅くして耐異物性も高めた。

軸受が破損する要因は焼き付きや過大な負荷の持続など多様だが、潤滑条件の過酷化による水素脆性も、今後は対策の重要性が増すとみられる。耐水素脆性軸受で破損しにくい価値を自動車業界などに訴求し、新たな需要を開拓する考えだ。


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