経済産業省主導によりソニーグループと半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が合弁で熊本県に半導体工場を建設する構想が浮上した。経産省が仲介役となり、関係者の調整を進める。前工程中心で総投資額1兆円以上を見込む。ただ、誘致実現には欧米に見劣りする補助金など支援策の大幅拡充が不可欠。国を挙げた半導体サプライチェーン(供給網)再構築への本気度が問われている。

構想では両社が2021年内にも半導体製造の合弁会社を設立する見通し。TSMCが主体となり、ソニーG以外の日本企業も一部出資して枠組みに参加する可能性がある。

前工程工場は熊本県・菊陽町にあるソニーGのイメージセンサー工場近くに建てる計画。自動車や産業機械、家電などに使う回路線幅20ナノ―40ナノメートル(ナノは10億分の1)のミドルエンド品を生産するもよう。線幅40ナノメートル未満の工場は国内で初めてとなる。投資の分担はソニーGが土地・建屋の手当て、TSMCが製造プロセスを受け持つ方向で調整する。パッケージなどの後工程工場も熊本県内に新設する見込み。

TSMCの工場誘致を主導する経産省は別の構想も同時並行で進めており、状況は流動的だ。TSMCの工場進出をめぐっては半導体産業が集積する九州地方を中心に検討し、熊本のほかに北九州市なども候補に挙がっている。「TSMCはいろいろな支援措置がないと日本に進出できない。他方で外国企業が日本に来てすべてブラックボックスでやられても大胆な支援はできない。政府は現在、様々な可能性を追求している」(政府関係者)。

TSMCは日本の車載用半導体市場に期待しているようだ。半導体不足で減産を強いられる自動車メーカーにとって、国内の新工場はサプライチェーン(供給網)リスク軽減の大きな助けとなる。TSMCに一部生産委託する車載用半導体大手のルネサスエレクトロニクスなどにも朗報となる。ソニーGは自社製品向け半導体を安定調達するとともに、将来的に合弁工場をイメージセンサーの生産にも活用できそうだ。

米中対立やデジタル変革(DX)時代の到来、相次ぐ半導体工場トラブルが重なり、主要国にとって“産業のコメ”と呼ばれる半導体のサプライチェーン見直しが喫緊の課題となる。先進国は工場誘致に向けた支援策を準備する。米国議会で半導体産業育成に520億ドル(約5兆7000億円)を投じる法案が審議中だ。欧州も半導体などデジタル分野に今度2―3年で1350億ユーロ(約18兆円)以上を投資する。日本政府の出方が注目される。


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