世界的な半導体不足の影響は、2022年3月期も各業界に一定程度残りそうだ。自動車業界では今期、日産自動車が約50万台、マツダが約10万台の減産影響を公表済み。日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は、3月に火災が発生したルネサスエレクトロニクスの工場が想定以上のスピードで復旧しているとし、「下期(10月―22年3月)には影響の半分は挽回できる」との見通しを示す。マツダの藤本哲也常務執行役員も「在庫を最大活用しながら、出荷への影響を約7万台に抑える」と強調する。

スズキは半導体不足による生産影響について「調達状況が把握できず、数字をつかめる状態にない」(鈴木俊宏社長)と認識。半導体やレアメタル(希少金属)の確保をめぐる競争は激化する見込みで「取り合いで慢性的な不足が続き、一企業での戦略的な確保は難しい」(同)と見る。

トヨタ自動車は半導体不足の影響で、6月に国内2工場3ラインの稼働を最大8日間停止するものの、今期の連結決算見通しに織り込み済み。業績や販売計画に変更はないという。

エレクトロニクス業界も引き続き状況を注視する。任天堂は半導体不足が家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の製造に影響する可能性を示唆。古川俊太郎社長は「世界的な半導体部材の需給逼迫(ひっぱく)の影響もあり、生産が追いついていない」と説明する。22年3月期のスイッチ販売計画は、過去最多の販売台数を記録した前期に比べ11・5%減の2550万台に設定した。

キヤノンも半導体部品の価格上昇などにより、21年12月期の営業利益に50億円の減益要因を織り込む。半導体部品の設計変更や転注をかけるといった対策を講じる。7―9月期までは供給不足の影響が残ると見るが、年末までには解消する方針だ。

工作機械など生産財にも影響は顕著だ。芝浦機械の坂元繁友社長は半導体不足について「足元で非常に厳しい」と説明。同社は22年3月期業績見通しに、半導体などの部材不足の影響を織り込みつつ、対応策として「計画的な発注で(在庫を)確保して、最大限の生産を行う」構えだ。

FUJIは主力の電子部品実装機が影響を受ける。関連部門の売上高はコロナ禍でも健闘した21年3月期の1255億円に対し、今期は1100億円を予想。須原信介社長は「電子部品実装機は月に1000台以上を生産し、半導体確保が大変。従来以外の調達経路や代替品も検討中だが、今の状況が続くと生産に影響が出そう」と懸念する。

デバイスや装置は一斉に増産投資も…

一方、半導体の供給側は逼迫した需給を緩めるべく、生産体制の増強を加速させる。三菱電機はシャープから取得した福山事業所(広島県福山市)の一部を活用し、電力制御用パワー半導体工場を新設する。導入設備を含む総投資額は約200億円で、21年11月の稼働開始を予定。

このほか、半導体メーカーでは東芝が傘下の加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)の既存建屋内にパワー半導体の製造ラインを導入するほか、富士電機は従来公表していた19―23年度のパワー半導体の設備投資計画を1年前倒しする。

京セラも半導体向け有機パッケージが「市場で完全に不足している状況。当分フル生産が続き、全ての要望に応えられないくらいの引き合い」(谷本秀夫社長)という。

このため、22年3月期の設備投資額を前期比45%増の1700億円に設定。2期連続で過去最高を更新する。セラミックパッケージを生産する鹿児島川内工場(鹿児島県薩摩川内市)やベトナム工場(フンイエン省)などに投資する。

半導体製造装置も活況だ。ディスコは1月に茅野工場(長野県茅野市)内に新棟を完成したほか、今期中に桑畑工場(広島県呉市)も完工する予定。大型投資は一段落する。

ただ、足元の半導体製造装置市場を見据え、国内外の拠点拡張などの投資は随時実施する考え。東京エレクトロンも山梨県に開発棟、宮城県で顧客との共創拠点を建設中。河合利樹社長は「拡大する市場と最新のニーズに応えるため、積極的な投資を加速していく」と力を込める。

パワー半導体の製造ラインを導入する加賀東芝エレクトロニクス

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