クボタは、主力の農業機械や小型建設機械などに搭載するディーゼルエンジンを自社生産している。そのエンジンの骨格を形成するのがブロック状のクランクケースだ。鋳造部品を手がける恩加島事業センター(大阪市大正区)は1917年(大6)の稼働で、100年超の歴史を刻む。脱炭素の潮流が加速する中、生産ラインの刷新や電気炉導入など、改革に乗り出す同センターを訪ねた。(大阪編集委員・林武志)

JR大正駅からバスで約20分。敷地面積7万8592平方メートルの恩加島事業センターではクボタ機械製品の黒子であり、心臓部となるクランクケースなどを製造する。同センターの中核が97年に稼働した、エンジン鋳物を生産するES(流気加圧造型)ラインだ。クボタは同センターのライン刷新など25年12月期までに総額186億8000万円を投じる。新ラインは23年末の完成、24年から量産を見込む。

鋳物原料の溶解システム更新も目玉となる。石炭由来のコークスの燃焼で二酸化炭素(CO2)を排出するキュポラ(溶解炉)から電気炉に変える。

「(電気炉導入の)計画当初の段階ではここまで脱炭素の流れが進むとは思わなかった」とエンジン事業部長を務める鎌田保一常務執行役員は率直にこう話す。CO2削減効果の算出はこれからだが「コークスを使わないことは大きい」(辻聡恩加島事業センター所長)。このため同センターも脱炭素に向けて「かなり変わる」と鎌田部長は見通す。

一方、ライン更新に伴う課題と認識するのが技能伝承だ。辻所長は「(97年のライン稼働を知る)技術メンバーが50歳以上になる」と説明する。クボタは若い技術人員がライン運営のノウハウを一から学ぶ機会と捉える。

クボタは20年1月、電動化技術を搭載したコンセプトトラクター「クロストラクタ」を公開した。この試作機にはクランクケースはない。農機なども電動化が進めば同センターのモノづくりも変革が求められる。ただトラクターなどに使う産業用エンジンは常時作業で使う。鎌田部長が「惰性で動かすことがほとんどない」と指摘するように産業用エンジンはパワーが不可欠。自動車の電動化のように一筋縄ではできない。

それでも鎌田部長は「我々もその方向(電動化)に向かわないと、政府が掲げる電動化に貢献できない」と強調する。足元の農機や小型建機の需要は好調で、それを支える同センターへの大型投資。一方で避けて通れない電動化、脱炭素をにらんだ改革も加速することになりそうだ。