国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成が世界的な社会課題となる今、循環型社会への転換を図ろうとする取り組みが加速する。有限な資源を循環させながら利用していく社会で、環境保全に大きく貢献する。中でも、成長が速く培養しやすい藻類が有望視されており、二酸化炭素(CO2)を資源として有効活用する「カーボンリサイクル」の観点からも早期の商用化が期待される。(門脇花梨)

3社の取り組み 【ユーグレナ 民間航空機で飛行成功】

「11年前、飛行機が飛ぶなんて誰も信じなかった」。ユーグレナの出雲充社長は感慨深い表情で語る。6月、同社が製造したバイオジェット燃料で民間航空機の飛行に成功した。同燃料は「サステオ」と称して展開。食品や化粧品で利用していた藻類「ユーグレナ(ミドリムシ)」の活用用途をエネルギー分野に広げた。

サステオは使用済み食用油とユーグレナから抽出した油を原料とする。現在は使用済み食用油由来とユーグレナ由来を9対1で配合するが、将来的にユーグレナ由来の割合を増やす。使用済み食用油は調達コストが上がりつつあるため、ユーグレナを安定的に培養し原料コストを抑える。

ユーグレナのバイオ燃料「サステオ=中央」。使用済み食用油とユーグレナ(ミドリムシ)から抽出した油を原料とする

出雲社長は「普及のネックとなるのが価格だ」と指摘する。現在は実証プラントで製造し、コストは1リットル当たり1万円程度。2025年に年25万キロリットルの商業生産を目指しており、実現できれば「既存のバイオ燃料程度の価格に抑えられる」と明かす。

バイオ燃料を使用しても車や航空機はCO2を排出するが、ユーグレナは光合成でCO2を吸収する。ユーグレナを燃料に使えばCO2排出の相殺が可能。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に期待がかかる。

【ガルデリア 環境・作業員に負担かけず】

ガルデリアが培養する藻類「ガルディエリア」

ガルデリア(東京都中央区、谷本肇社長)は、希少金属の回収に「ガルディエリア」という藻類を使う。金属の溶液中にガルディエリアを入れると、細胞壁の表面に金とパラジウムがくっつく。従来は石油由来の樹脂で回収していた。藻類で代替できれば、化石燃料の使用を減らせる。

ガルディエリアは温泉に住む藻類。同社は高効率な培養方法を確立した。死んでいても金とパラジウムを吸着する性質をもち、強酸性の溶液からも金属を回収できる。

谷本社長は「都会には希少金属を使った使用済み家電などが大量にあり、都市鉱山といわれる。リサイクル現場で活用してほしい」と意気込む。

さらに同社は人力小規模金採掘(ASGM)でも、ガルディエリアを活用しようとしている。ASGMでは鉱石からの金の抽出に、猛毒のシアン化物や水銀を使う。作業者は毒物を吸い込むリスクと常に隣り合わせだ。金属の吸着にガルディエリアを使えば水銀は不要になる。谷本社長は「ASGMの多くは発展途上国にある。労働者は女性や子どもが多く、問題解決に貢献したい」と真剣だ。

金属の溶液中で「ガルディエリア」の細胞壁の表面に金が吸着

【アルガルバイオ 機能性成分与え培養】

アルガルバイオ(千葉県柏市、木村周社長)は、アスタキサンチンやルテインなど、特定のカロテノイド成分をため込んだ藻類を培養する独自技術をもつ。育種や培養条件を変えることで、さまざまな機能性成分をもった藻類を培養できる。成分に応じて色が変わるため、緑以外にも赤や黄色などの色が付く。見た目にも鮮やかで、藻類の用途開拓につながるとみる。

アルガルバイオが培養したカラフルな藻類。成分に応じて色が変わり、見た目も鮮やか

現在、健康食品としての開発を本格化し、22年にも市場投入したい考えだ。需要動向を見て、製造設備の増強も検討する。他企業とも協働し、エネルギーやバイオ素材領域での活用も視野に入れる。

木村社長は「藻類は社会インフラになりうる素材。当社は顧客の求めるモノを藻類でいかに作れるかを命題とする。ニーズに合った藻類を提供するプラットフォーマーになり、多くの領域に進出したい」と力を込める。

CO2を資源に 藻類、中核技術の1つ…企業規模問わず活用拡大

50年のカーボンニュートラル達成に向けて、CO2を資源として有効活用する「カーボンリサイクル」が注目されている。経済産業省・資源エネルギー庁は19年に同技術のロードマップを公表。カーボンリサイクルの実現に必要な技術革新を後押ししている。光合成でCO2を吸収する藻類は中核技術の一つに位置付けられ、日本勢は高い競争力を持つ。

資源エネルギー庁によれば藻類由来のバイオジェット燃料の市場規模は、30年時点で国内航空会社(国際線)だけでも1900億円を見込む。ロードマップでは、同年頃にはコストを既存のジェット燃料同等(1リットル当たり100円)まで低減し、実用化を目指すとしている。

有力企業のユーグレナは「グリーンオイルジャパン」宣言をしており、賛同する大手企業の参画を募っている。40社・団体が参画済みで、デンソーとは微細藻類を活用した事業開発で包括提携を締結。研究開発の勢力図を拡大し続けている。

大手企業にも藻類を活用する動きがある。IHIは光合成により高速で増殖する微細藻類「高速増殖型ボツリオコッカス」を大量培養し、この藻油から燃料を一貫製造するプロセスを開発中だ。6月には航空燃料として、国内定期便に供給した。企業規模を問わず藻類の活用が広がっている。

インタビュー/東京都市大学教授 古川柳蔵氏 生活者の価値観 変えるべき

―循環型社会への転換に商機はありますか。

「未利用資源の活用にチャンスがある。厄介者にされているものを見つけて、価値を見いだせば新商品になる。元来、日本人が得意とすること。これから増えてくるだろう」

―どのような事例がありますか。

「海藻やサンゴをエサとするガンガゼは増えすぎると食害を起こすが、堆肥として利用できる。また捨てられていた海藻の煮汁から化粧品の原料が作れることもわかってきた。分析技術が向上したことで可能になった」

―近年増えている藻類の活用については。

「循環型社会の実現に向けて先進的ではある。ただ、本当の意味で循環型社会を実現するには、無駄なモノに目を向ければ新しい価値が生み出せるというように、生活者の価値観を変える必要がある。化石燃料の代替物を見つけるだけにとどまらず、意識改革まで視野に入れるべきだ」

―他に課題は。

「地方と企業の交流が不足している。企業は使える未利用資源の存在にすら気がつかない。気づきを共有する場を増やし、イノベーションが起こりやすい環境づくりを推進してほしい」