携帯通信各社が法人事業に力を注いでいる。15日に同事業の説明会を開いたNTTドコモは、協業企業との連携強化によって商材の拡充を進める姿勢を強調。新製品としては眼鏡型端末などを発表し、映像関連の分野で強みを発揮したい考えも示した。通信業界では消費者向け通信料の値下げが進み、収益源多角化の観点で法人事業の重要性が増す。各社は差別化につながる活動が問われ続ける。(編集委員・斎藤弘和)

「医療や建設など、あらゆる領域をパートナーとの協創により変えていきたい」―。丸山誠治ドコモ副社長は15日の説明会で力を込めた。同日、自社のブランドスローガンを19日から「あなたと世界を変えていく。」に変更することも発表。革新的な技術やサービスはドコモ単独でつくるものではないとの考えを鮮明にした。

ドコモは、第5世代通信(5G)分野での協業企業数を2021年度末までに5000社とする目標を掲げてきた。現在の実績は約4000社としており、順調な進展をうかがわせる。「映像伝送やロボティクス、人工知能(AI)といった技術分野により深く取り組み、全国に広めていく。この(深さと広さの)両輪が強みであり、他社に負けるものではない」(坪内恒治常務執行役員)。

特に重視するのは映像伝送。3月末時点では法人向け5G商用案件のうち映像関連の相談が35%で最多という。これを踏まえ米グーグルの眼鏡型端末「グラス・エンタープライズ・エディション2」を8月10日に発売すると発表。800万画素のカメラを搭載しながら46グラムと軽量である点を訴求し、製造業の技術者が遠隔地の映像を見ながら作業指示を出したいといった需要を取り込む。

ただ当然ながら、ドコモは協業相手やサービスをひたすら増やせば良いわけではない。顧客や技術の変化を見定め、必要な商材を高い品質で提供するための工夫がこれまで以上に試されそうだ。

通信業界で収益源多角化の重要性が増す中、競合他社も法人事業の拡充に向けて自社の強みを訴求する。

今井康之ソフトバンク副社長は、BツーBツーC(企業間対消費者)の領域でサービスの認知度を向上したい法人が多く、通信会社には消費者との接点の多さが期待されていると指摘。この部分では「圧倒的にソフトバンクが優位だ」と胸を張る。関連企業が総合情報サイト「ヤフー」や対話アプリ「LINE」を展開していることなどが念頭にある。

KDDIは差別化要因にIoT(モノのインターネット)を挙げる。森敬一取締役執行役員専務は「長くやってきて、ノウハウを相当持っている」とする。IoTという概念が広まる前からセキュリティーや車載といった分野で通信モジュールを展開し、「我々のブランドで責任を持って提供してきた」。各社は得意な領域で築いた顧客との信頼関係を生かし、他の商材の提案も的確に進めていけるかが問われる。