医薬基盤・健康・栄養研究所と理化学研究所の研究グループは、患者の診療情報と網羅的生体分子情報(オミックスデータ)といった異種データから相関関係を抽出する新たな人工知能(AI)の開発に成功した。開発した創薬標的を探索するAIを利用し、難病に指定されている特発性間質性肺炎の一種である「特発性肺線維症(IPF)」の創薬標的候補の探索に有用なたんぱく質群を検出した。開発したアルゴリズムは汎用性があり、オープンプラットフォーム(基盤)上で幅広く利用してもらう計画。

間質性肺炎薬で成果

創薬標的とは新しい薬を創るためにターゲットとなるたんぱく質などの生体分子。これをAIで効率的に探す。特発性間質性肺炎は7種類に分けられる。中でもIPFは患者が多いにもかかわらず、投与できる薬が限定的で、予後が悪いことが知られている。IPFを含む特発性間質性肺炎では患者の層別化が創薬標的候補の探索で重要なカギを握る。だが、患者の層別化をデータのみで行う技術がなかった。

研究グループは「新薬創出を加速する人工知能の開発」事業により、大阪大学のコホート(集団)から集めた診療情報602例とオミックスデータを、開発したAIで解析。創薬標的候補を見いだすことに成功した。開発したアルゴリズムは汎用的に活用できるためオープンプラットフォームで利用できる仕組みを構築する。2021年度末にも国内運用を始め、AI解析ツールなどを無料提供する。

同開発事業では創薬AI領域における府省横断型産学官連携プロジェクトとして、医薬健栄研が中心となり、科学技術振興機構(JST)と理研が推進する体制で始まった。

各省庁が進める研究開発施策の中から重点施策を選び追加で予算を配分する事業「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM、プリズム)」に18年度から採択されている。