クルマの機能を大きく分けると、「走る」「曲がる」「止まる」の3つがあります。それぞれの役割を担う「エンジン」「駆動系部品(ドライブトレーン) 」「電装品」「懸架・制動系部品(ブレーキ、サスペンション)」、さらにボディなどの「内外装品」の5つを解説。さらに国内主要メーカーを紹介します。

自動車産業は関連業種を含めて542万人が就業し、その動向は日本経済に大きな影響を与える。クルマの生産過程では複雑なサプライチェーン(供給網)が形成され、約2万―3万点の構成部品を数多くのモノづくり企業が手がけている。近年は、電動化や自動運転技術の普及を見越した企業再編などの動きもあるが、業界構造そのものに大きな変化はない。

次ページからはクルマを5つの機能に大別し、それぞれの部品供給を担うサプライヤーの動向を交えて解説する。〝大変革期〟が本格化する前に、現在の自動車業界を紐解いてみよう。

1.エンジン
 2.駆動系部品(ドライブトレーン)
 3.電装品
 4.懸架・制動系部品(ブレーキ、サスペンション)
 5.内外装品


【1.エンジン】(1/5)

1.エンジン

クルマが走るための動力源となる機械部品。シリンダーと呼ばれる円筒形状の部品の中で「吸気→圧縮→燃焼→排気」の4行程を繰り返しながらピストンが往復し、回転運動に変換する「レシプロエンジン」形式が大半。エンジンだけで約1万点の部品が使われており、何らかの形で多くのメーカーが製造に携わっている。

燃料を繰り返し燃焼(爆発)させる構造のため、エンジン内部、特に燃焼室内は約2000度Cとかなりの高温となる。そのため熱の影響を考慮した緻密な設計や、各部品で高度な耐久性が求められる。

前述のピストンやシリンダー、回転軸となる「クランクシャフト」のほか、吸排気系部品などで構成される。さらに、放熱や内部の油膜を適切に保つ「ピストンリング」や、潤滑オイルなどを塞ぐ「オイルシール」など、小物ながらエンジンの性能を左右する部品もある。国内主要企業によるエンジン部品(関連する電装品など含む)の2019年度の出荷額は約4兆6000億円。(自動車部品工業会「出荷動向調査」)

ガソリン車の環境規制の基準にあたる温室効果ガス排出量は、ほぼエンジンの性能で決まる。メーカーは燃焼効率を極限まで高める技術開発に長年取り組んできた。また、ハイブリッド車(HV)は、エンジンと電動モーターの2つを動力源を持つ自動車を指す。脱炭素化の流れを受け業界では、電気自動車(EV)など「脱エンジン車」へのシフトが進むとみられるが、多くのメーカーはしばらく需要が続くとされるHV車への搭載拡大を狙った開発や投資を続けている。

【国内関連メーカー】
アイシン/豊田自動織機/NOK/フタバ産業/愛三工業/TPR

【2.駆動系部品(ドライブトレーン)】(2/5)

2.駆動系部品(ドライブトレーン)

エンジンによって生み出された力を、自動車の推進力として車輪に「伝える」役割を持つ。エンジンの出力を損なわず伝え、平地や坂道など状況に応じて力を調整できるかがポイントで、車の走行性能や乗り心地を大きく左右する。

減速比(ギア比)を制御して、エンジンのトルクや回変数を最適な状態に変換する「トランスミッション」や、動力伝達を担う「トルクコンバーター」、タイヤの回転軸である「ドライブシャフト」などが主な構成部品。性能はさることながら、軸受けや歯車など部品一つひとつに精度が求められ、生産には高度な技術が必要だ。そのため、業界全体で海外への生産移転が進む中でも、駆動系部品は国内生産し、海外拠点に輸出しているメーカーも多い。

国内主要企業による駆動系・操縦装置部品の2019年度の出荷額は約4兆2000億円。うちトランスミッション関連の出荷額が半分以上を占める(同)。

ただ、電気自動車(EV)は、モーターで推進力を制御できるため、トランスミッションが不要になる。関連部品の需要も大幅に減少することが見込まれる。来たる電動化時代を見据え、メーカー各社は技術開発を進めている。特に、モーターや変速機、差動装置などをユニット化したEV用部品「eアクスル」に関連する投資は活発化するとみられ、今後の動向が注目される。

【国内関連メーカー】
デンソー/ジェイテクト/日本精工/武蔵精密工業/ユタカ技研/アイシン/日立アステモ

【3.電装品】(3/5)

3.電装品

ランプやスイッチなど自動車に内蔵される電子部品。安全装置や自動制御技術の高度化などにより車体の複雑な制御を要求されることから、搭載される電子部品の点数は年々増加している。

温度を感知し異常などを検知する「センサー類」や、エンジンの燃費向上などを制御するコンピュータ「電子制御装置(ECU)」、車内の電源供給と信号を送る「ワイヤーハーネス」、その他のランプ、スイッチ、ウインカーなどが代表的な部品だ。

国内主要企業による電装品・電子部品(車体関係)の2019年度の出荷額は3兆1000億円。(自動車部品工業会「出荷動向調査」)。最近は、特に車載半導体の重要性が増している。これらは、ドライバーの安全運転をサポートする「先進運転支援システム(ADAS)」やバッテリーの電圧を制御するなどさまざまな用途で使われている。今後は自動運転の普及も想定され、画像認識やタイヤ・ブレーキの制御など、これまで以上に車載向け半導体の需要増が見込まれる。

また、ワイヤーハーネスは、高電圧に対応する製品や、導体を従来の銅からアルミニウムに変更した製品が主流になるとされる。EVにより電力消費が見込まれることから、軽量化に寄与するなど技術の高度化が一層求められている。

【国内関連メーカー】
住友電気工業/豊田合成/小糸製作所/東海理化/スタンレー電気

【4.懸架・制動系部品(ブレーキ、サスペンション)】(4/5)

4.懸架・制動系部品(ブレーキ、サスペンション)

車体の足回りであるタイヤ周辺の部品を指す。車体の速度を制御したり、安全性を維持する役割がある。 主に、速度の減速や停止を担う「ブレーキ」や、路面の凹凸によって受ける衝撃を吸収する「ショックアブソーバ」、車体の位置を定め安定性を保つ「サスペンション」などで構成される。

国内主要企業による懸架・制動装置部品の2019年度の出荷額は約7700億円(自動車部品工業会「出荷動向調査」)。

サスペンションを作るには特に多額の設備投資が必要なため、系列メーカーごとの取引が中心だ。また、ブレーキ分野では世界的な事業展開が進められ、曙ブレーキは海外での売上が約6割を占める。ホンダ系サプライヤー3社と日立オートモティブシステムズが経営統合して誕生した日立アステモやトヨタ系のアドヴィックスなどもこの領域の部品も手がけ、系列との取引を主力にしている。

なお、日本では2021年11月から、前方の停止車両に衝突しないようにするなどの「自動ブレーキ」の搭載義務化が始まる。同様の流れは欧州連合(EU)でも進んでいる。国連欧州経済委員会(ECE)は搭載が義務づけられると、EUでは年間1500万台以上、日本では同400万台以上の新車が対象になるとしている。自動運転が〝当たり前〟になる時代に備えた、競争力のある製品が求められる。

【国内関連メーカー】
KYB/エフテック/曙ブレーキ/ヨロズ/アドヴィックス/日立アステモ

【5.車体部品】(5/5)

5.車体部品

車のデザインは完成車メーカーが担うが、ボディなどの外装品の量産は主に板金加工や樹脂成形を得意とするメーカーが請け負っている。クルマの乗り心地を左右するシートなどの内装品も同様だ。ユーザーに愛される車をつくるためには、デザイン性と機能性の両立が必須。近年、新車開発の度に多彩なエクステリアデザインが可能になるのは、イラストを描くデザイナーや立体を形創るモデラーといったプロフェッショナルの存在があることは言うまでもない。それと同等に、量産メーカーの加工技術や金型精度の向上に依るところも大きい。

燃費改善のため車体軽量化に向けた技術開発が長年行われてきた。かつて外装部品の材料は鋼板が中心だったが、近年はアルミニウムや高張力鋼板(ハイテン材)の活用が広がっている。また、スポーツ車・高級車を中心に、車体部品に炭素複合材を採用する例も出てきた。

国内主要企業による車体部品の2019年の出荷額は約4兆6000億円(自動車部品工業会「出荷動向調査」)。数ある企業の中でもトヨタ紡織は、シートとドアトリムで国内トップ・世界3位のシェアを誇る。

EVシフトなどによる「脱ガソリン」の影響は直接受けにくい領域だが、今後、完成車メーカーの戦略など市場の構図が変化する可能性もあり、例外なくその動向を注視している。

【国内関連メーカー】
トヨタ紡織/ニッパツ/日産車体/テイ・エステック/ユニプレス/ジーテクト