植物の光合成は太陽などからの光エネルギーを受け、水と二酸化炭素(CO2)によって呼吸で取り込むための酸素と生命活動に必要なエネルギー源の炭水化物を生み出す。さらにその後の活動によってこれらを水とCO2へと戻す循環させている。この仕組みを人間社会でも作り出そうと、「人工光合成」を大阪市立大学の人工光合成研究センターが取り組む。人工光合成によるクリーンエネルギー確保を目指す。(編集委員・安藤光恵)

期待の技術

人工光合成は石油エネルギーなど化石燃料への依存から、環境負荷の少ない社会への移行に向けた期待の技術だ。植物の光合成に倣うことでCO2を有効活用でき、低炭素社会の実現へ前進する。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の掲げる「クリーンエネルギー」や「気象変動への対策」にも関わる。

大阪市立大学人工光合成センターは、飯田グループホールディングスと2015年から沖縄県宮古島市で、一戸建て住宅での実証実験を始めた。人工光合成によりCO2からギ酸を生成し、さらにギ酸から生成した水素をエネルギーとして活用する。

水素生成時にCO2が発生しても再び人工光合成に使用でき、循環による実質的な排出量ゼロを達成する。住宅で必要なエネルギーのうち、どこまでを人工光合成で対応できるのかを検証する。

水素エネルギー自体がクリーンエネルギーとして注目されるが、水素生成時にCO2を発生させてしまっては本来の目的である環境負荷の低減が達成できない。人工光合成は発生したCO2を再利用する循環により、CO2を増やさないのが利点だ。

循環の枠組み

ギ酸生成の段階を経ることで貯蔵時の体積を大幅に減らせる。同センターの天尾豊所長は、「CO2から直接水素を生成する方法と2本柱で検討していく」スタンスだ。住宅1棟分のエネルギーを全て人工光合成でまかなうのはすぐには難しいが、「太陽光発電が一般に導入された流れと同様に、風呂の給湯や居間の照明など、一部のエネルギーを置き換えるところから始めればいい」と考える。

人工光合成はCO2を有効活用できるのが利点だが、一方で天尾所長は「大気中のCO2濃度はわずか0・04%に過ぎない」と指摘する。人工光合成のためのCO2をかき集めようとエネルギーを消費しては、本末転倒になる。このため、製鉄所や火力発電所などCO2を大量に排出する現場で循環の枠組みを作ることができれば有効活用につながる。

人工光合成は導入の現場ごとにギ酸のほかメタノールや一酸化炭素などさまざまな生成物が考えられる。天尾所長は人工光合成の定義について、「CO2を使い有用な物質を生み出すこと」と主張する。導入したい場合は「CO2を何に変えたいか」を考えることが起点だ。「事業所内で循環によるCO2の『地産地消』を実現し、大気中のCO2を増やさないことからスタート。そこから徐々に外部のCO2を使い削減に貢献したい」考えだ。