リコーリースはリース契約の審査業務の与信判断に、2018年1月から人工知能(AI)を活用している。与信判断へのAI活用はリース業界初だという。同社の顧客は約40万社に及ぶ。その98%は中小企業で、信用調査会社から信用情報を取得しづらい。リースを希望する企業が事務機器や情報通信機器を契約したら料金を支払えるか審査し、可否を決める際、一部をAIに任せている。社員は判断が必要な案件に集中できる利点がある。

【小口契約大量に】

リコーリースはベンダーリースと呼ぶ手法を得意とする。リースする機器の販売会社やメーカーが審査手続きを代行するため、小口のリース契約を大量に結べるのが特徴だ。

審査業務では元々、月間約3万件と件数が膨大のため、スコアリングによる自動回答に取り組んでいた。販売会社などがウェブ上で申請すると、過去のリース実績データを基に、リース希望の企業をスコアリングし、スコアが良い場合は自動で契約可能と回答する。スコアが悪い場合は、社員が可否を判断して回答する。

【コンペ実施】

スコアリングの活用により自動回答率はAI導入前から高めてきたが、20%程度で頭打ちだった。そこでAIを導入し、自動回答率向上と審査業務効率化を目指した。

AIはリコーのICT研究所の技術を採用した。リコーは現在、リコーリースの株式の33・71%を保有する筆頭株主だが、実力主義で決めた。3社でコンペを実施し、リコーが最も高評価だった。

導入にあたり、これまでリース契約をした際の審査判断、スコアリングの判定結果、財務データなどをAIに学習させた。これらをベースにAIが審査し、一定水準に達した企業は自動で契約可能と回答するようにした。現状は過去6年分のデータを活用している。

過去の審査実績をAIに学習させ、一部の自動回答を実現した

【補完的な存在】

AI導入が寄与し、自動回答率は30%まで高まった。野田拓也BPT本部IT統括部部長は「人は判断が必要な案件に注力できる」と導入効果を実感している。渥美光治審査本部審査一部リスク戦略室室長は「リース会社のキモは審査だ」と強調しつつも、「断られる側の気持ちを思うと、センシティブな案件をAIに任せるのは問題がある」と説く。AIは補完的な存在と位置付ける。

リコーリースは小口案件だけでなく、大口案件にも取り組み始めている。業務範囲を広げる中で、しっかりした審査体制を維持するために、AI活用の重要性がさらに高まりそうだ。(戸村智幸)