次の成長投資へ手元資金確保

武田薬品工業は大型買収で大幅に増えた有利子負債の圧縮に取り組んでいる。2018年に約6兆2000億円を投じてアイルランドの製薬大手シャイアーを買収し、前年度末比約6倍の5兆円以上に膨らんだ有利子負債を21年6月末時点で4兆230億円まで圧縮した。さらなる財務体質の改善とともに成長投資も求められており、攻めと守りのバランスを取った経営を進めている。

負債圧縮のため19年に大阪の本社ビルを売却、さらには非中核事業の売却も進め、ドライアイ治療薬の事業をスイス・ノバルティスに約5512億円で、20年には武田薬品ブランドを代表する大衆薬「アリナミン」などを扱う事業子会社の武田コンシューマーヘルスケアを約2420億円で譲渡した。矢継ぎ早に施策を実行し、当初の非中核事業売却目標であった100億ドルを超え、20年3月末時点で計129億ドルに達した。

モルガン・スタンレーMUFG証券の村岡真一郎アナリストは「有利子負債圧縮の推移は合格」としつつも、「革新的な初期段階の新薬は複数あるが、まだ大きな進展はみられていない。そのため株式市場は物足りなさを感じている」と指摘する。

攻めとなる成長には新薬が不可欠だが、新薬を一から開発するには時間とコストがかかる上、薬事承認を得られるとは限らない。新薬候補(パイプライン)があるベンチャーやその事業を獲得する方が効率が良い。買収資金の目安の一つ、本業で稼ぎ出す力があるかどうかを見極める指標「EBITDA(当期利益に支払利息、減価償却費を加算し、法人所得税費用を引いたもの)」で、武田薬品は19年度の6607億円から20年度は前年度比59・7%増の1兆549億円となり「投資力はある」(別の大手証券会社アナリスト)。

クリストフ・ウェバー社長も「売り上げ収益(売上高)の成長を活用して、投資を強化する」としており、21年度は最大六つの新薬で承認を申請し、22年度上期までに5件の承認取得を見込む。同社は30年度までに売上高5兆円(20年度は3兆1978億円)を目標に掲げており、「メガファーマ」として海外の大手製薬と戦う地盤固めを急ぐ。