スマートフォン決済市場が転機を迎える。最大手のPayPay(ペイペイ、東京都千代田区、中山一郎社長)は10月から中小加盟店の決済手数料を有料化し、1・98%(消費税抜き)とする。一方、NTTドコモなどの競合他社は軒並み2022年9月末まで決済手数料を無料か実質無料とすることを決めた。収益確保と加盟店拡大のどちらに重きを置くにせよ、今後は集客などで加盟店の経営を支援する施策の実効性が試される。(編集委員・斎藤弘和)

「加盟店網(の違い)だと思う。推計だが、他社は街の個店への導入が、かなり少ない」―。PayPayの笠川剛史執行役員は、自社と競合他社とで戦略が分かれた背景をこう分析する。

PayPayは8月、年商10億円以下の加盟店で無料としてきた決済手数料を、10月から有料化すると発表。これに対し、楽天ペイメント(東京都港区)やKDDI、ドコモは相次いで決済手数料の無料化や無料期間の延長を決めた。

楽天ペイメントは手数料実質無料化で加盟店拡大を重視(「楽天ペイ」の利用イメージ=同社提供)

KDDIの菊池良則au PAY企画部長は、無料期間の延長を発表した後の反応について「加盟店からは非常に好評。有償化したら契約を解除する意向だった顧客が、継続すると言ってくれた例もあった」とする。離反防止に一定の効果が出ているようだ。

ただ、どれほど体力がある事業者でも、収益性を考えると永久に無料とすることは難しい。楽天ペイメントの小林重信上級執行役員楽天ペイ事業本部長は「(無料期間が終わる)1年後以降の事は、そのときの状況を踏まえて検討する」と述べた上で「店舗は、手数料負担の一方で何が得られるかを考えて決済手段を選択する。選んで頂くには、優良な顧客を集客できることが重要だ」と指摘した。

同様の認識は各社が持っている。ドコモは加盟店が消費者に割引クーポンなどを配信できる「スーパー販促プログラム」に注力。従来は主に大手企業へ提案してきたが、「ゆくゆくは個店の事業主でも簡単に使える仕組みを目指したい」(田原務ウォレットビジネス部長)。

PayPayは集客サービス「PayPayマイストア ライトプラン」に加入する加盟店の手数料は1・60%に設定した。笠川執行役員は定量目標は非開示としつつも、「加盟店の半分以上はマイストアを導入してもらいたい」と意気込む。

経済産業省によると日本のキャッシュレス決済比率は20年時点で29・7%にとどまり、スマホ決済の伸びしろは残る。「コロナで苦しい中小加盟店を応援する」(KDDIの菊池氏)ことは必要で、加盟店の拡大を優先する戦略にも妥当性はある。早期に集客支援の効果を示し、多くの加盟店の定着につなげられるかが問われる。