2022年3月期の業績予想を上方修正したトヨタ自動車だが、慎重な姿勢を崩していない。主に東南アジアの新型コロナウイルス感染症拡大に伴う部品不足による9―11月の減産影響は小幅に抑えられそうだが、鋼材などの資源価格の高騰が利益を圧迫する。そのインパクトは“お家芸”である原価改善効果でまかないきれないほどだ。12月以降の挽回生産や電動化投資といった重要テーマを抱える中、原価改善やサプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化といった「トヨタの神髄」をどこまで発揮できるかが試される。(名古屋・政年佐貴恵、同・山岸渉)

原価改善活動振るわず

 

トヨタの21年4―9月期連結決算は、営業利益が北米で前年同期比5・6倍の3951億円、欧州で同4・2倍の529億円、日本で同3・3倍の8092億円となるなど、全地域で大幅増益を達成した。販売の好調に加えて、中古車価格の上昇やリースの残価損益の好転、また海外を中心に販売奨励金を低く抑えられており、台当たりの利益が向上。営業利益で1兆550億円の増益効果があった。また円安も2550億円の押し上げ効果となっている。

一方、強みである原価低減活動は振るわなかった。トヨタは年間3000億円を原価低減目標としているが、4―9月期は半期の目安である1500億円を若干下回った。同時に資材高騰の影響で効果が打ち消され、営業利益で300億円の減益要因となった。4日にオンライン会見した近健太取締役は「資材高騰の影響は非常に大きい」と説明する。

鉄や銅に加えて、パラジウムといった貴金属などの価格が高騰しており、下期はさらに影響度合いが大きくなる見通しだ。トヨタは12月以降の挽回生産で減産のマイナス分をできる限り取り返したい考えで、一般的には生産台数が増えるほど原価改善効果は出やすい。しかし「今までは原価低減で吸収していたが、足元の状況は厳しい」(トヨタ幹部)。

資源コストはこれまでにないレベルで上昇している。通期でも改善効果でカバーできず、営業利益で3450億円の減益要因となる見通しだ。通期業績予想は上方修正したが、近取締役は「円安効果を除けば資材高騰などにより実質下方修正だ」と厳しい見方を示す。また、「部品や固定費で数円、数千円、数万円レベルの改善を地道に進め、少しでも挽回して上積みできるように頑張りたい」と話す。

生産回復傾向も…来月以降、大幅挽回へ

トヨタの販売は高級車ブランドの「レクサス」を含めた世界販売が8月まで前年同月比を上回り、堅調に推移してきた。9月は減産の影響で世界販売が前年同月比16・4%減の70万122台にとどまったものの、依然として引き合いは強い。しかし現状は減産により車両供給が停滞し、小型スポーツ多目的車(SUV)「ヤリスクロス」といった人気車種を中心に、納期の長期化を招いている。

通期業績のカギを握るのが今後の生産動向だが、打撃からは回復しつつある。9月は当初の減産台数を国内17万台、海外26万台の計43万台としていたが、実績は国内16万台、海外19万台となる計35万台に縮小した。10、11月も減産影響は避けられないが、11月の生産水準は単月で過去最高レベルの85万―90万台を計画する。

8月以降、東南アジア域内での部品の代替生産や複数拠点での生産を実施しており、「サプライヤーと一体となった調達努力で影響を抑えられた」(トヨタ担当者)ことが功を奏した。熊倉和生調達本部長は10月に「一番悪い時期は脱し平準化してきた」との認識を示しており、足元でもその見方は変わっていない。

トヨタが22年3月期に、国内生産で「死守する」と明言する年産300万台を実現するには、日当たりでおよそ1万3000台弱の生産が目安となる。12月以降はそれを大幅に上回る、日当たり1万4000―1万5000台規模の高水準な挽回生産計画を部品メーカーに通達しているようだ。ただし「元々フルキャパシティーに近い計画を立てていた」(トヨタ幹部)こともあり、サプライヤー側の対応力も含めてどこまで生産水準を上げられるか、そのハードルは高い。

トヨタは調達担当の部署が先頭に立ち、今後の生産能力についてサプライヤーと緊密にコミュニケーションを取っているほか、現場に入り込んだ改善活動などを継続している。資金面や人手含め、サプライヤー各社の状況に応じた支援を検討しており、サプライチェーン全体で生産の急回復を乗り切る方針。各社は「高水準の生産について行けるよう、在庫の積み増しや生産人員の確保などを進める」(部品メーカー首脳)と、備えに全力を尽くす構えだ。

“トヨタらしい”EV テスラ・日産に性能匹敵

「トヨタは電気自動車(EV)の反対派と言われるが、そういうつもりはない」。長田准執行役員は4日のオンライン会見でこう強調した。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)機運の高まりで欧州などでEVシフトが加速する中、トヨタもEVに本腰を入れ始めた。その先兵が22年半ばに発売する「bZ4X」だ。トヨタ初の世界戦略EVとなる。

トヨタ初のEV専用車「bZ4X」

bZ4Xは電池容量71・4キロワット時、航続距離500キロメートルと、EVで先行する米テスラや日産自動車などに匹敵する性能を達成した。ハイブリッド車(HV)で培ってきた電池技術などで、EVの課題とされてきた航続距離の確保につなげた。

開発責任者の井戸大介主査は「いたずらに電池を増やさず、航続距離を実現する省エネルギー性能にこだわった」と明かす。走行、安全性能など従来の「クルマの魅力」も重視する“トヨタらしさ”を前面に出した。

長田執行役員は「他社に劣らないEVをそろえる。EVは再生可能エネルギーのコストが下がれば、電動車の主流になる」と言い切る。念頭に置くのは欧州だ。欧州は再生エネが豊富で、脱炭素化の一環として将来HVの販売が規制される見通し。EVニーズが高まるとみる。

トヨタはbZシリーズ7車種を含むEV15車種を25年までに投入する。電池関連では30年までに計1兆5000億円を投資すると表明した。ただEVへ一気にかじを切るのでなく、多様な車種構成で顧客ニーズにきめ細かく対応する姿勢は変えない構えだ。フルラインアップが強みの電動車は足元で好調を維持。21年1―9月の世界販売は約198万台と、20年の約196万台を9カ月で上回った。

「日本のエネルギー状況ではプラグインハイブリッド車(PHV)などの方が二酸化炭素(CO2)削減につながる」(長田執行役員)。電力や充電インフラが整っていない新興国でもEVへの急激な移行は難しい。当面はHVやPHVがCO2排出削減の軸になるとみる。豊田章男社長が「敵は炭素だ」と強調するように、CO2排出を車のライフサイクルを含め総合的に減らすことが脱炭素化に不可欠だ。トヨタの姿勢をいかに世界へ訴求できるかが問われる。