乗用車7社は2022年3月期連結業績予想で、トヨタ自動車を除く6社が売上高を下方修正し、従来予想と比べた減少幅は6社合計で2兆6700億円に達する見込みだ。半導体など部品不足に伴う車の減産で新車販売が停滞し、収益を押し下げる。22年3月期の世界販売見通しでは全7社が下方修正し、従来計画と比べた減少幅は7社合計で約197万台となりそうだ。

「車両さえ供給できれば多くの販売を実現できた。大変悔しい思いだ」。(SUBARU〈スバル〉の中村知美社長)。同社主力の米国市場は需要が堅調で3万5000台規模の受注残を抱える。一方、半導体不足や東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大の長期化などにより部品調達が滞り、22年3月期の世界生産見通しで2度目の下方修正を余儀なくされ、8月公表比13万台減の86万台(前期比6・2%増)に引き下げた。

部品調達は今後も不透明感が続く見通し。日産自動車のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は「東南アジア(のコロナ影響)は完全に回復しておらず、今後も継続する」。スズキの鈴木俊宏社長は「12月以降は期初の生産計画の70%で推移するだろうと堅く見ている」とした。

足元では改善の兆しも見られる。トヨタの近健太取締役は部品不足からの販売回復時期を明言できないが「リスクは相当小さくなっている」と指摘する。12月以降の生産見通しは「過去と比べ相当高いレベルまで生産が回復するのは間違ない」とし、過去最高水準の生産を計画している11月と同等の規模感を見込む。

ただ改善傾向の中でも調達には不安が残る。三菱自動車は半導体調達に関する会議を毎週実施するが、加藤隆雄社長は「日替わりで情報がころころ変わっている状況」と明かす。スバルは不安定な状況に対応するため、生産計画を従来の月単位から10日単位に見直した。ホンダも販売状況を見ながら週単位で部品の割り当てを変更し、各地域の生産を検討している。

部品サプライヤーは、完成車メーカー各社の生産挽回に備え、先行して在庫や人の確保を進めてきた。それだけに生産のブレに身構える。ある部品メーカー首脳は「減産計画を早く詳細に示してもらえると助かる」と訴える。トヨタは従来から精度の高い生産計画が評価されており、近取締役はサプライヤーから生産挽回などへの備えを「過剰に構えてしまったことによるロスはないと言っていただいている」と述べた。

22年4月以降の半導体不足の影響についてスズキの鈴木社長は、「生産計画に対して100%供給される状況にはない」との考えを示す。完成車メーカー各社には、サプライヤーの負担を減らしながら、生産の挽回を軌道に乗せる難しいかじ取りが求められる。

新車代替で中古車人気、金融事業にも好影響

乗用車メーカー各社が2022年3月期連結業績で利益の押し上げ要因と見込むのが、為替の円安と販促費抑制だ。7社のうちトヨタ自動車など4社が当期利益もしくは当期損益を上方修正した。トヨタは8月時点で為替レートの前提を1ドル=105円としていたが、同110円に見直した。営業損益ベースでトヨタは従来予想比4300億円、ホンダは480億円の押し上げ効果を見込む。

半導体などの部品不足で各社が車の生産台数を引き下げる一方、需要は堅調だ。大幅な値引きをしなくても売れる状況のためメーカーがディーラーに支払う販売奨励金が減り、利益に貢献している。

ホンダの竹内弘平取締役執行役専務は「販売奨励金を1番使っている北米では、生産減の影響でディーラーの在庫が枯渇状態。北米では1台当たり20万円ほどの奨励金を使っているが、今期は半分より少し上に抑えている」と説明する。かねて販売奨励金の抑制に取り組む日産自動車のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)も自助努力に加え「今の販売奨励金の水準は需給バランスが取れていない結果」と話す。

新車の生産台数減は金融事業にも好影響を及ぼしている。トヨタの21年4―9月期の金融事業の営業利益は、前年同期比48・6%増の3644億円だった。新車の代替として中古車の需要が上昇傾向にあり、価格も上がっている。リース事業での下取り価格が想定を上回っており、「金融事業のリースの残価損益が好転している」と近健太トヨタ取締役は説明する。

一方でホンダとSUBARU(スバル)は、部品不足のマイナス影響を円安などの好材料で吸収しきれず、当期利益の通期見通しを下方修正した。

部品不足に加え、各社の業績のマイナス要因になっているのが、原材料価格の高騰だ。パラジウムやロジウムといった貴金属の値上がりは落ち着いているものの、鉄鋼やアルミニウムなどの価格が上昇傾向だ。トヨタの近取締役は「円安影響を除けば、資材高騰などにより実質下方修正」との見方を示す。